スイス銀行の“秘密絶対厳守”神話の崩壊 名門銀行が経営危機で吸収合併

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 島津家の養女・篤姫が徳川家に嫁いだのは1856年。チューリヒでクレディ・スイス(CS)が創業した年でもある。同社は長い歴史があるだけでなく、顧客の秘密厳守で知られたプライベートバンクの大手であり、総資産75兆円を保有する「バルジ・ブラケット(世界的な巨大投資銀行の意)」としても知られている。

 そのCSが経営危機に陥り、同じスイスのUBSに吸収合併されることになったのは、3月19日のこと。買いたたかれた金額は総資産を大きく下回る約4200億円というが、日本で言えばメガバンクの一角が一晩で消えてなくなったようなものだ。

 経済部の記者が言う。

「直接のきっかけは、3月10日にアメリカ西海岸のシリコンバレー銀行が経営破綻したこと。これが発端となって経営不振の銀行から預金の引き揚げが始まり、次なるターゲットとなったのがCSだったのです」

守秘性が崩れ…

 名門銀行として知られたCSだが、近年はつまずきばかりが目立っていた。アメリカの同時多発テロ以降、スイス系銀行が得意とするナンバーアカウント(匿名口座)が批判を浴びて守秘性が崩れる一方、投資銀行などの事業も不振だった。

 金を隠したい面々や、税を逃れたい人々が、ソッポを向き始めたわけである。

 スイス銀行(SBC)の元ディーラーで経済アナリストの豊島逸夫氏によると、

「2年前には米のアルケゴスという素性の良くないヘッジファンドとの取引でCSは5200億円(当時)もの損失を出し、また領収証を買い取る変なビジネスにもお金を出していた。欧州では“そんなことをやってCSは大丈夫なのか”という目で見られていたのです。昨年にはリストラが得意なCEOが就任し、いよいよ人員整理が本格化するとの観測が流れていました」

 すでに、プライベートバンク部門でも営業チームごとリヒテンシュタインの銀行に逃げ出すなど、足腰も弱くなっていたという。

「直近の金融レポートによるとCSからは1日あたり1兆円の預金が1週間続けて引き出されていたとあります。スイス政府もそれを知って、UBSによる吸収合併を急いだのでしょう」(同)

 日本の銀行は「対岸の火事」と見ていられるのか。

週刊新潮 2023年3月30日号掲載

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