「中国の脅しはポーズ」「金門は丸腰でも怖くない」 台湾最前線の人々が語った“有事”への本音

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危機を感じていない台湾の人々

 台湾有事は日本有事――。故・安倍晋三元総理が唱え続けて有名になった言葉である。日米両国では目下、中国の台湾侵攻に備え、急ピッチで軍事力の強化を進めているが、ウクライナの例を見てもわかるように、前提となるのはあくまでも台湾自身が中国に抵抗することだ。台湾の人々は、自国に迫る危機をどのように受け止めているのだろうか。台湾在住で昨年中華民国(台湾)に帰化申請をして認められたライター・広橋賢蔵氏による現地ルポ。

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 1989年6月、筆者は天安門事件の衝撃に揺れる北京での語学留学を終え、同年8月に居住地を台湾に移した。以来34年間、台北に暮らし、台湾人の妻と結婚した。昨年には、中華民国(台湾)に帰化申請して認められた。つまり私自身、今では台湾人の一人でもあるわけだ。

 そんな私の目から見る限り、台北市民は普段、日本人が考えているほど「危機」を感じていない。私の台湾人の友人は当然のように中国とのビジネスを続けているし、「中国の脅しはいつものこと。ポーズだけだし、フェイクで我々を混乱させたいだけ」などと鷹揚としたもの。彼が特殊なのではなく、これはごく一般的な台湾人の反応だと思う。

 では、最前線に暮らす人々はどうなのだろうか。

「もし島民が投降するなら我々も武器を構えずに投降せよ」と指示され…

 まず向かったのは、福建省厦門の6キロ沖合に浮かぶ金門島。行政区分としては福建省金門県に属する。中国・福州沖の馬祖列島と並び、対中紛争における台湾側の最前線の砦とされる島だ。金門島で生まれ育ち、現在は金門県選出の立法委員(日本の国会議員に当たる)の陳玉珍氏(49)に話を聞くと、

「金門人は元々、中国大陸にルーツがあり、対岸とは長い交流の歴史があります。丸腰でも何も怖くない。戦争なんて愚かな選択です。それより中国から観光客を誘致し、島の経済を潤わせたい。水だけでなくガスや電気などのインフラも、中国側が整備してくれるというなら享受するまでです」

 次に向かったのは馬祖列島。ここでも島民による中国への危機感は薄いというが、とはいえ、馬祖には約3千名の台湾軍将兵が駐屯しているという。空港で出会った入隊4年目の志願兵は、どうやら軍事オタクらしく、軍で20年は勤め上げるつもりだと話す。士気旺盛かと思いきや、「人民解放軍が攻めてきたらどうするの?」と尋ねると、

「島民の意思に従い、もし島民が投降するなら我々も武器を構えずに投降せよ、と上官に言われています」

 とのこと。今回の取材で話を聞いてきた島民たちの顔を思い浮かべた。彼らはウクライナ人のように、侵略者に対して果敢に立ち向かうだろうか。筆者にはその確信が持てなかった。

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 日米の危機感をよそに、意外にも台湾では「戦争なんてない」と思っている人が多いようなのだ。他方で、積極的に警告を発する人々も現れ始めており――3月30日発売の「週刊新潮」は、広橋氏による驚きの台湾レポートを掲載している。

「週刊新潮」2023年4月6日号

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週刊新潮 2023年4月6日号掲載

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