結局「バフムト攻略戦」はロシア・ワグネルの敗色濃厚 軍事ジャーナリストが指摘する“勝敗の分れ目”
ワグネルとの不協和音
読売新聞は2月15日夕刊に「戦場へ受刑者 露国防省も 米報道 突撃部隊 戦死相次ぐ」との記事を掲載した。
記事はCNNの報道を紹介するもので、ロシアの正規軍さえも囚人を兵士として採用していたという内容だった。
《元軍人だったという受刑者はCNNに対し、昨年10月、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムト近郊ソレダル周辺の工場への攻撃に参加したと述べた。生還したのは約130人のうち約40人だったという》
恐るべき戦死率であり、これにはワグネルも悲鳴を上げた。時事通信は3月6日、「ワグネル、武器を要求=『前線崩壊』警告、不協和音-ウクライナ」の記事を配信した。
「プリゴジン氏がロシア軍に対して、『武器が不足している』と強い不満を表明したのです。《ワグネルが今、バフムトから退却したら全ての前線が崩壊する》という脅しのような言葉もありました。プーチン大統領に対する“点数稼ぎ”を露骨に行うワグネルを、ロシア正規軍の幹部は苦々しく思っていました。ワグネルとロシア軍の不協和音は、バフムトの激戦で表面化したのです」(同・記者)
ワグネルの増長
いたずらに死傷者を増やすだけの稚拙な作戦に、PMCと正規軍の不協和音──こんな状態では勝てる戦争も勝てないだろう。
ウクライナ軍はバフムトで持ち堪え、いよいよ反撃に出ると報道された。2014年から要塞化を進め、物資も着々と備蓄してきたバフムトを陥落させるのは難しかったのだ。
ロシアの敗因について軍事ジャーナリストは「そもそもワグネルが攻撃の主体になることがおかしかったのです」と言う。
「PMCは『戦場における警備会社』というのが本来の任務です。正規軍が攻撃を行っている間、基地などの防衛を担うわけです。アメリカ軍もPMCを活用しますが、『敵の要衝を攻撃してくれ』などと依頼することはありません。カネで危険な仕事を請け負う集団ですから、それこそ裏切りのリスクも否定できないのです。ワグネルがバフムト攻略戦で活躍していたという時点で、ロシア正規軍は相当に弱体化していたと考えられます」
緒戦でロシア軍は、大軍でウクライナに侵攻した。だが、ウクライナ軍の必死の抵抗により、まずは将軍クラスに多数の戦死者が出た。
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