買い物中の尿漏れで自己嫌悪、トイレに駆け込んでも窮地に…61歳「前立腺がん患者」が語る“想像を絶する異変”
手術後は爆睡
ダ・ヴィンチとは、腹腔鏡手術の進化系と言える。バーチャルリアリティーの3次元立体映像を見ながら操作し、仮に執刀医の手が震えたとしてもロボットが補正してくれる。精確な手術が保証されているため、執刀医も思いきってメスを振るうことができる。
さらに、腹腔鏡手術のため出血量が50ccと極めて少ない。担当医は男性に「術後翌日には歩けるようになるほど回復が早い」と説明した。
手術は今年1月に行われた。看護師に案内されて手術室に入ると、目の前にダ・ヴィンチが置いてあったという。誓約書にサインすると全身麻酔をかけられ、男性は意識を失っていった。
「私の名前を呼ぶ看護師さんの声で目を覚ますと、午後5時を過ぎていました。8時間を超える手術だったわけです。『無事に終了しましたよ』と言われて安心しましたが、意識はぼんやりとしていました。顔には酸素マスクがあり、チューブが体につながっているのが見えました。ナースコール用のボタンと、痛みが強い時に押すボタンの2つを握らされましたが、そのまま寝てしまいました」
襲いかかった激痛
早朝に目が覚めた。激痛で寝ていられなくなったのだ。顔にへばりついている酸素マスクも煩わしい。
「食欲は全くなく、水以外は喉を通りませんでした。朝の検温で微熱だと分かりましたが、酸素マスクは外され、看護師さんから『起き上がってください』と言われました。腹腔鏡手術ですから小さな傷とはいえ、おへその周りに6カ所の穴が開いています。上体を起こそうと腹筋に力を入れると、たちまち激痛が走りました」
腹部や腰に強烈な痛みを感じる。脂汗がだらだらと流れる。しばらくすると、下腹部も差し込むような痛みに襲われた。だが看護師は「今日から歩いてもらいます。そのほうが回復は早いです」とお構いなしだ。男性は「勘弁してくれ!」と心の中で叫んだ。
「レントゲン室に行くように言われました。車いすを用意してくれましたが、乗る際に激痛が走り、レントゲン室に入ると再び激痛です。様々な体勢を取る必要があり、その度にあまりの痛さに『い、た、た、た、た……!』と悲鳴をあげてしまいました」
激痛にのたうち回っても、看護師は「歩け、歩け」を繰り返す。点滴スタンドでバランスを取りながら、ナースセンターの周りを歩いた。点滴スタンドに鎮痛剤が備え付けてあることは知っていたが、安易に頼ると治らないような気がして躊躇していた。
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