ステージBと診断された61歳「前立腺がん患者」の告白 屈辱的な激痛の針生検、医師の言葉に有頂天になったことを後悔
手術開始
検査でがんが転移していないことも分かった。男性は手術を受けることを決め、大学病院に伝えると、「とりあえず年明けの1月23日を手術日にしましょう」と言われた。
男性が「手術まで日があります。転移は大丈夫ですか?」と担当医に質問すると、「前立腺がんは進行が遅いので大丈夫です」とのことだった。
「手術で根治を目指しましょう。我々も全力で対応します」──担当医から激励され、男性は「ありがたい」と感謝した。
2023年1月19日、手術前検査と手術の説明が行われた。トイレなしの個室を選び、21日に入院。電源の延長コード、スマホ、タブレット、パソコンの充電器やケーブルを持ち込んだ。個室は9階で眺めがいい。
そして23日の朝を迎えた。いよいよ手術が行われる。男性が目を覚ますと、下腹部が大きくなっていたことに気づいた。
「非常に力強い様子に驚きました。人並みの欲望を抱きながら日常生活を過ごしていましたが、これほど立派になったのは近年では稀という印象でした。下腹部を見ていると、過去に交際した女性のうち何人かの表情が脳裏に蘇ってきます。もう女性と交際することはできないのかと思うと、かなり切なくなりました。事前に担当医の説明を聞いていた時は『もう年だし、孫もいる。そういう機能が失われても仕方ない』と考えていたのですが、全く逆の気持ちに襲われたのです」
午前8時15分、看護師に案内されて手術室に向かった。気持ちは不思議なほど落ち着いていた。手術室に入ると、ダ・ヴィンチが“鎮座”していた。
「ダ・ヴィンチを見ると、非常に心強い気持ちになりました。ベッドに腰かけて誓約書にサインすると、スタッフの皆さんが自己紹介をしてくれました。担当医が『頑張りましょうね』と声をかけてくれて安心しました。全身麻酔が始まり、麻酔科医の声に耳を傾けているうちに意識を失っていました」
【買い物中の尿漏れで自己嫌悪、トイレに駆け込んでも窮地に…61歳「前立腺がん患者」が語る“想像を絶する異変”】に続く
註:西郷輝彦さん(1947~2022)は、2011年に前立腺がんが判明。全摘手術を受けたが、17年に再発。21年に国内未承認の最先端治療を受けるためオーストラリアのシドニーに渡った。22年2月20日、東京都内の病院で死去。