波乱のセンバツ、強豪「履正社」がまさかの初戦敗退…そこに見えた“わずかな綻び”と“希望”

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同点打と“紙一重”の打球

 また、プロ注目の西は、抜群の脚力とヘッドスピードでスカウト陣にアピールしたほか、4番でキャッチャーの坂根は、スローイング、バッティングともに力強さは健在だった。特に西は、冬の間にスイングスピードを強化していきたという。5打数1安打に終わったものの、あと少しで長打になりそうな場面もあった。

 それは、逆転を許して、履正社が1点を追う9回表。ノーアウト一塁で、西は送りバントではなく、“強硬策”に出た。西が放った打球は、こすったような当たりだったにもかかわらず、あわやレフトの頭を超えそうになるまで飛んでいった。惜しくもアウトになったものの、同点打と“紙一重”の打球だった。

 多田監督は、試合後のインタビューで「あの場面は(チームで一番信頼できる)西だったので打たせました。これまでの試合でもそうしてきたので、迷いはなかったです」と断言していた。この試合では、結果は出なかったものの、多田監督の“個の力”を伸ばそうという明確な方針は、非常に理解できる。

 選抜での悔しい敗戦を糧に、チームとして一回り大きく成長してほしい。大阪桐蔭と名勝負を繰り広げて、大阪代表として、夏に再び聖地・甲子園に戻ってくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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