SG投資、ワクチン、妊娠中絶…アメリカは州レベルでも分断が激化で大混乱へ

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「反ESG投資」の共和党

 その傾向が最も顕著になっているのがESG投資だ。

 ESG投資とは環境・社会・企業統治の向上を目指す投資のことだ。投資判断に非財務的な要素を取り入れ、銃や化石燃料などの生産企業への投資を禁止している。

 ウォール街を始め世界の金融業界ではブームとなっているESG投資だが、共和党は「金融機関がその権力を使って、いわゆる『Woke』と呼ばれる社会的正義を重視するエリート主義を助長している」と猛反発している。

 連邦議会では共和党が中心となって「反ESG投資」を決議した(大統領は拒否権を行使)が、州レベルでも「反ESG」の波が起きている。

 共和党が主導する25の州は2月22日、退職年金制度(ERISA)が投資を決定する際にESGの視点を考慮するよう求めるバイデン政権が定めた規制の撤廃を要求した。

 共和党が主導する州では反ESGを理由に金融機関への圧力をかけ始めている。

 テキサス州は今年1月、米金融大手シティグループが銃器産業を差別したため、同社による州内での地方債引き受けをすべて禁止する措置を講じた。

中絶をめぐっても…

 妊娠中絶についても両党のつばぜり合いは激しさを増している。

 ワイオミング州のゴードン知事(共和党)は3月17日、妊娠中絶に使用される経口中絶薬の使用を禁じる州法案に署名した。同法の成立により、薬の処方や販売は「軽犯罪」となり、違反者は最大6ヶ月の禁固刑などが科されることになる。

 今回の法律が成立した背景には今年1月、米食品医薬品局(FDA)が経口中絶薬「ミフェブリストン」の薬局での販売を許可したことがある。

 FDAの規制緩和に危機感を覚えたワイオミング州が対抗措置として講じたのが今回の法律だ。共和党が主導する州で同様の動きが広がることが予想されている。

 米連邦最高裁判所が昨年6月、中絶を合法化した判決を覆して以降、26の州が人工妊娠中絶を禁止・制限した一方、中絶への保険適用を拡大するなど支援を強化した州もある。

 中絶に関する規制を巡り、州ごとの違いがさらに鮮明になった形だ。

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