有事で「日本人の6割が餓死」という衝撃の研究 成長ホルモン牛肉、農薬汚染食料に頼らざるを得ない食料事情

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地産地消が最も安全?

 しかし06年に、当面の目標として、コメ中心の食文化を取り戻すなどすれば、63%に引き上げることは可能であるとのレポートを農水省が出したことがあります。食料自給率を上げるのは、決して夢物語ではないのです。ところが政府の意識は低いと言わざるを得ず、「軍事・外交的な安全保障」や「経済安全保障」が声高に叫ばれても、「食料安全保障」が強調されることはありません。

 では、私たち国民にできることはないのでしょうか。

「三里四方の食によれば病知らず」

 昔の人はこう言ったといいます。三里、つまり約12キロ四方で取れる身近なものを食べれば健康に生きられるという意味です。地産地消が最も安全。このいにしえの教えを現代風に解釈すれば、国産の安全な食品を食べるべきであるといえるでしょう。

 従って、少し値段が高いとしても、ポストハーベストの農薬散布リスクがある輸入物ではなく、安全な無農薬国産野菜などを選んで買う。それは国内の農家を助け、支えることにもつながります。

 つまり、意識して地産地消を進めることで、危険な輸入食品を遠ざけて「食の安全」を確保できると同時に、「国内生産力の強化=食料自給率の向上」、すなわち食料安全保障の確立という好循環を生み出せるのです。

安い食品はコスパが悪い?

 ただでさえ食品の値段が上がっているのに、そんなコストパフォーマンスの悪い買い物なんてできない。そう考える人もいるでしょう。しかし、安かろう悪かろうです。安いからといって発がんリスクの伴うエストロゲン600倍の輸入牛肉を食べ続け、結局、がんになって命を失ってしまったら、元も子もありません。安い牛肉を買って命を削る。長い目で見ればこれほどコストパフォーマンスが悪い話はないはずです。

 目の前の安さに飛びついて輸入物に手を伸ばす。この行為は、食料安全保障の面でも、食の安全の面でも、実は自らの首を絞めているに等しいのです。自分の国は自分で守りたいのであれば、まずは自国の農業や漁業を国民で支える。これこそが「国防」の要だと思うのです。

鈴木宣弘(すずきのぶひろ)
東京大学大学院農学生命科学研究科教授。1958年生まれ。東京大学農学部卒業。農水省に15年ほど勤務した後、九州大学大学院農学研究院教授などを経て、東京大学大学院農学生命科学研究科教授に。「食料安全保障推進財団」の理事長も務める。『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』『農業消滅 農政の失敗がまねく国家存亡の危機』等の著書がある。

週刊新潮 2023年3月23日号掲載

特別読物「米研究者が衝撃レポート 有事で『日本人の6割』が餓死! 『危険食品』に支えられる『食料自給率』危機」より

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