有事で「日本人の6割が餓死」という衝撃の研究 成長ホルモン牛肉、農薬汚染食料に頼らざるを得ない食料事情
自給率わずか38%。我が国の食料事情は極めて心もとない。しかも、私たちの食卓は成長ホルモン牛肉などの「危険食品」の輸入によって支えられているのだ。結果、日本人の6割が餓死するというシミュレーションが……。専門家が警鐘を鳴らす「日本の食の危機」。【鈴木宣弘/東京大学大学院農学生命科学研究科教授】
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それは極めて「衝撃的」なレポートでした。同時に、それは至極「当然」のレポートでもあったのです――。
日本の人口の約6割、7200万人が餓死する。
局地的な核戦争後に起きる食料生産の減少や物流停止による食料不足で、世界全体で少なくとも2億5500万人の餓死者が出る。その約3割(7200万人)が食料自給率の低い日本に集中する。こうした内容の試算を、アメリカのラトガース大学の研究者らが昨年発表しました。
6割が餓死。
衝撃的な数字です。しかし、改めて考えてみてください。最新の日本の食料自給率(2021年度)は38%に過ぎません。つまり6割超は輸入に頼っているのです。ちなみにアメリカは121%、フランスは131%、ドイツは84%、イギリスは70%となっています。
したがって核戦争に限らず、何か有事が起きて物流が滞ってしまえば、日本人の6割が餓死の危機にさらされることは、先のレポートで指摘されるまでもなく当然想定される事態といえるのです。
そして、物流の停滞が決して絵空事ではないことを、私たちはすでに学んでいるはずです。コロナ禍により、一時はマスクが国内生産だけではままならなくなったことを忘れてはいけません。
危機は今そこにあるのです。
カネの力で食料が買えなくなる要因
〈こう説くのは、東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘(のぶひろ)氏だ。
元農水官僚であり、農業行政等に精通する鈴木教授は、かねて「食料安全保障」の重要性を訴えてきた。
まさか先進国ニッポンで飢えるなんてことがあるわけもない。
のんきにそう考えられていたのも今は昔。「安いニッポン」と言われて久しい。食料はカネで買えばいいという平和な時代は過ぎ去った。少なくとも、一朝有事の際、自給率38%の国の食料安全保障は極めて脆弱であると言わざるを得まい。
食料自給率、それはすなわち国防の問題なのである。〉
私はなにも危機をあおっているのではなく、極めて当たり前の指摘をしているに過ぎません。なぜなら、コロナ禍だけでなく、現在の国際情勢や地球環境を考えれば、物流が滞り、日本がカネの力で食料を買えなくなる要因はいくつも存在しているからです。
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