反対多数でも「飛ばないボールを使う」と宣言したマキロイ その驚きの持論とは

スポーツ

  • ブックマーク

マキロイは賛成

 一方のマキロイは「たとえPGAツアーが規制を採用しなくても、メジャー大会で飛ばないボールを使うことになるのなら、僕はPGAツアーでも飛ばないボールを使うつもりだ」と語り、周囲を驚かせた。

 彼はすでにメジャー4勝を挙げており、まだ勝利していないマスターズを制すれば、生涯グランドスラムを達成する。

「僕のキャリアにおける最大の関心事は、メジャー大会で優勝できるかどうかだ」と言い切るマキロイは、2026年からメジャー大会で「飛ばないボール」を使うことになるとすれば、その状況に早くから慣れ、さらなるメジャー優勝を挙げるための練習・準備として、PGAツアーの大会でも率先して飛ばないボールを使うことが得策と考えている。

 さらに、こんな持論も披露した――。

「飛ばないボールで戦うことになれば、昨今の試合ではあまり握ることがないロングアイアンやミドルアイアンを多用することになり、そういうゲーム展開は、長いアイアンを得意としている僕にとっては有利になる。たぶん、僕以外のトッププレーヤーたちにとっても有利になる」

 そして、ドライバーで飛ばすだけ飛ばした後にショートアイアンやウエッジでピンそばに付けるという昨今のゴルフとは異なり、「長いアイアンを駆使して戦うゴルフは、本当のベストプレーヤーを選び出すことになる」とマキロイは言う。

 昨今の飛距離偏重はパワー合戦の様相を呈しているが、「飛ばないボール」を採用することでパワーのみならずワザの競い合いも生じ、「真の戦いが真のベストプレーヤーを選び出すのだ」とマキロイは語っている。

 だが、その理屈通りにゴルフの在り方が変わるものなのかは、大いに疑問である。

 ゴルフ用具メーカーの多くは、エリート・レベル向けとリクリエーショナル向けに分けて2種類のボールを製造することになれば、「コストが大幅にアップする」ため新提案には反対の姿勢を示している。

 しかし、飛距離合戦がどこまでも進んでいけば、いつしかゴルフコースは全長8000ヤード、いや9000ヤードを求められることにもなりそうで、そこに限界を感じているゴルフ場関係者は、ボールの飛距離を制限することは究極の対策だと感じている様子だ。

 今年8月までのフィードバック期間には、さらに多くの賛否が寄せられそうで、ゴルフ界の揺れはしばらく収まりそうもない。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。