岸田首相がメンツにこだわった「ウクライナ訪問」 タイミングは良かったのか悪かったのか
タイミングが良かった説について
各社、ある程度は可能性を察知していたものの、政府関係者や官邸幹部がこれを肯定することはなかったという。
「となると人海戦術にならざるを得ず、結果的にNHKが幅広くフォローしていたように感じられました。インドからウクライナに向かうために使ったチャーター便は羽田空港から政府専用機が離陸する約3時間前に飛び立っていたということですが、それもしっかり押さえていましたね。事前情報があってその裏付けを取ろうとしていた流れの中にあったと思います」(同)
結果として、岸田首相のウクライナ訪問は、現地到着の前段階、ポーランドから列車に乗る時点で大きく報じられることとなった。
極秘であるはずの動向に関する情報を守れない政府、また情報を得たからといって無防備に伝えるメディア、双方に批判が寄せられたのは言うまでもない。
折しも国会では、高市早苗経済安保担当相の「捏造発言」に注目が集まり、放送法についての議論が行われていたわけだが、「電撃訪問」情報が到着10時間前からオープンになっているあたりを見る限り、日本には「報道の自由」が十分保障されているようである。
官邸は喜ぶかも
幸い、途中で攻撃を受けるといったアクシデントには見舞われず、無事に首都キーウに到着したわけだが、このタイミングでの訪問への評価は二分されているという。
ちょうどロシアのプーチン大統領を中国の習近平国家主席が訪ねたタイミングと重なり、これほど好適なものはない、というのは好意的な見方。一方で、WBCが佳境を迎えている時期でもあり、国内にアピールするには「なんと間が悪い」などと指弾する声もあった。
「はっきり言えるのは、習氏の訪問もWBCの盛り上がりも想定できるほど直近で訪問のスケジュールが決まっているわけではないということです。わかっていてプランが変更できるならもう少し違ったプレゼンテーションがあったのではないかなと思います。タイミングが良かったと言われれば官邸は喜ぶとは思いますがね(笑)」(同)
WBCの盛り上がりの影響で、戦後初めて紛争地に日本の首相が入るという、「画期的」な出来事の報道が盛り上がりに欠けたのは事実だろう。「外交の岸田」アピールで支持率アップを狙っていたとすれば、少し期待外れということになる。
[2/3ページ]