WBC制覇で巨人に「栗山GM」待望論 原全権監督とのただならぬ“関係”とは
巨人の全権監督は時代遅れ
現在、NPBで全権監督は原監督ただ1人だ。楽天の石井一久監督は昨オフにGM職を外れ、監督に専念することになった。
「プロ球団は役割分担が明確でなければならない。監督は現場のマネジメント、フロントは監督と意思疎通を図りつつもFA、ドラフト、外国人獲得などのチーム編成を全うすることが在るべき姿だと思っている。巨人がやっていることは時代にそぐわない」(元パ・リーグ球団社長)
そこで栗山氏に白羽の矢という流れなのである。
WBCでは大谷翔平(エンゼルス)ダルビッシュ有投手(パドレス)ら大物MLB勢の招集に成功したことで、「史上最強」の日本代表を構築し、14年ぶり3度目の栄冠に導いた。
「日米にわたる人脈、人望は今の日本球界で右に出るものはいない。大選手ではなかったが、日本ハムでは10年、監督を務め上げた。引退後も野球を学ぶことをやめず、選手時代の実績が突出していなくても名指導者になれることを体現した。今回のWBCでは吉井(理人)投手コーチが『投手のメンバーを決めたときに優勝を確信していた』と振り返ったように、最大の勝因は栗山監督のリクルート活動だった。NPB球団では監督業よりフロント業が向いていると思っているのは私だけではないはず」(前出の元監督)
原監督がヘッドコーチに誘った過去
この元監督によると、日本ハム監督時代の経験も大きいという。
「日本ハムは日本球界で最もフロントと現場の線引きが明確な球団。監督はトレードですら発表直前、記者よりほんの少し先に知らされるだけ。チーム強化に関する事柄のほとんどが事後報告。栗山監督はそこで長年、チームを預かった。原監督は栗山監督より年長だが、それぞれが役割を果たすよう律することができるだろうし、栗山監督なら説得力もある」
栗山氏と原監督の関係性を振り返ると、原監督は第2次政権時、当時評論家だった栗山氏のヘッドコーチ招聘に動いた経緯がある。
「栗山さんにとっても原さんは現役時代、同じセ・リーグでプレーする憧れのスター選手だった。スポーツキャスターの仕事の兼ね合いでコーチ就任は実現しなかったが、親密な関係は続いた。一昨年には暴力問題を起こした中田(翔内野手)を2人のホットラインを生かし、シーズン終盤に無償トレードへとこぎ着けた。WBCでも(昨夏に女性スキャンダル騒動があった)坂本(勇人)の招集を断念した際、栗山さんは原さんに相談していた」(遊軍記者)
巨人は昨オフのFA戦線での惨敗に象徴されるように、事実上のGM職を兼ねる原全権監督の存在は各方面でひずみを生み、既に補強では限界を露呈している。
「原さんもそのことは感じているようだが、監督なら誰しもが絶大な力がある編成権は手放したくない。ただ、栗山さんになら素直に譲れる上に、WBC優勝監督の肩書を持つだけに全権監督の試みが失敗に終わったとの印象を薄め、メンツを保てる。栗山さんぐらいしか、そういう人材はいないのではないか」(同)
巨人は戦力強化が進まなかっただけに、今季も覇権奪回は容易ではない。3年連続V逸なら内容次第で、契約途中でも原監督の進退問題が浮上する。仮に続投でも何らかのてこ入れは不可欠。その時点で栗山GM招聘に動くのか、それとも、次期代表監督の人選を睨みながらその前に……。WBC優勝監督同士による二頭体制実現へ、にわかに巨人の動向が注目される事態になった。
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