サッカー経験ゼロの“オタク”がプロリーグで戦術分析官? 「観戦した数千試合のデータが脳内に」
「子どもの頃から運動が大嫌い。中でもサッカーが一番苦手だったんですよ」
とは、J1を頂点とする日本のプロサッカーリーグの「5部」に相当する関西1部リーグの「おこしやす京都AC」で戦術分析官を務める龍岡歩氏(42)だ。対戦相手を詳細に分析し、取るべき戦略や戦術を提案する重要な役回り。過去にJ1チームを相手に2度のジャイアントキリング(大番狂わせ)を達成した“作戦の神様”である。
「僕の役目は大きく三つ。チーム運営のメインコンセプトの決定。対戦相手を分析し、監督やコーチとゲームプランを立てること。そしてスカウトも含めたチームの編成の検討です」
J1チーム相手にもジャイアントキリング
自身は「サッカー経験ゼロ」という門外漢だったが、手がける作戦はピカイチともっぱらの評判だ。J3の藤枝MYFCに勤務していた平成27年には、天皇杯の2回戦でJ1所属の清水エスパルスを4対2で撃破。京都ACに移籍後の令和3年にも、同じく天皇杯の2回戦でJ1サンフレッチェ広島を5対1で沈めている。
すでに関西リーグで2度の優勝に貢献しており、一昨年まで京都で指揮を執った元ガーナ代表選手のムスタファ前監督は「日本で出会ったサッカー関係者の中では戦術の第一人者」との賛辞を送ったほどだ。
「サッカーにのめり込んだ初日は、忘れもしない平成5年5月15日。たまたま目にしたJリーグの開幕戦がきっかけでした。当時のヴェルディ川崎と横浜マリノスが対戦していました」
この時、龍岡氏は中学生。
「最初は“サッカーなんかやってるんだ”という程度。それが、楽しそうに盛り上がる観客や、得点のたびに歓声が上がるスタンドの様子に興味を引かれて。そこで“サッカーを勉強してみよう”と思い立ったんです」
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