徴用工問題で進展も、「ちゃぶ台返しに遭う恐れが」 なぜ日本側は譲歩した?
米国からのプレッシャー
ならばなおさら、どうして「求償権の放棄」が含まれていない解決策をのんでしまったのか。
この点、政治ジャーナリストの青山和弘氏によると、
「日本側は当然、韓国側に対して求償権の放棄も解決策に盛り込むよう交渉を続けてきました」
ということらしいが、ついに要求はかなわずじまい。なぜなら会談そのものを急ぐ必要に迫られていたのだ。
「現時点で日韓首脳会談を行わなければ、きたる5月に予定される広島のG7サミットに尹大統領を招待し、日米韓で対中及び対北問題について話し合うこと自体難しくなる。米国から日韓関係の早期改善を求めるプレッシャーも強くかかっており、岸田首相もこのタイミングで韓国側に妥協せざるを得なかったのです」(同)
ちゃぶ台返しに遭う恐れ
十全の成果を得られなかった岸田総理に比して、尹大統領は株を上げた。
「米国は尹大統領へのご褒美とばかり、4月に国賓待遇で迎えると発表しました。バイデン政権での国賓待遇はフランスのマクロン大統領に続く2例目です。尹大統領も自尊心をだいぶくすぐられたのではないですか」(前出・武藤氏)
やんぬるかな。またも勝ちは韓国か。外務省で日米安全保障課長などを歴任し、岸田政権でも内閣官房参与を務める外交評論家の宮家邦彦氏は、
「今回の外交は100点満点ではないかもしれません。でも、全体の利益を考えた時に日韓で妥協できる点があるなら、多少は譲歩することもひとつの政治判断。岸田さんの判断は間違ってはいないと思います」
と語るのだが、一方で先の西岡氏の次のような危惧も無視はできまい。
「韓国の野党第1党『共に民主党』の代表は解決策について“屈辱的賠償案”だと述べています。彼らがもう一度政権を握るようなことがあれば、それこそ『慰安婦問題日韓合意』が文政権時代に覆されたのと同じように、ちゃぶ台返しに遭う恐れがあります」
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