【松戸ベトナム女児殺害事件から6年】巨額の借金、経営する飲食店は移転へ…リンちゃんの父親が語る“苦境”
賠償金判決は「紙切れ同然」
ハオさんは、旅館2軒の買い取りに借金を使った。その経営で得られた収益を、保証金に充てるつもりだ。順調にいけば、4月にオープンする予定だったが、1軒の旅館が強盗に襲撃されるなどで想定外の修理費が大幅にかさんだ。
「観光組合の参加費などでもさらにお金が必要になり、難しくなりました」
予定が大きく狂った。
ベトナムの銀行にも返済をしなければならず、滞れば自宅がなくなってしまう。このため松戸市の自宅も担保に、新たな借金を検討中だ。
だが、本を正せば、損害賠償が適正に支払われていれば、あるいはマンションの差し押さえが円滑に進んでいたら、ハオさんもこんな資金繰りに奔走する必要はなかったはずだ。
「民事裁判に勝っても、これでは意味があるかどうか疑問です。それに犯人に財産があっても、結局何もできません。おかしいですね。これまで一生懸命やってきましたが、気持ちが負けそうです」
賠償判決は「紙切れ」同然で、遺族はいつまでも泣き寝入りするしかないのか――。
こうした状況を変えるため、殺人事件被害者遺族の会「宙の会」は3月11日に開かれた総会で、国が遺族への損害賠償を立て替えた上で、加害者に請求する「代執行制度」の導入をあらためて求めるとともに、齋藤健法務大臣へ陳情書を提出した。
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