日銀がため込んだ株50兆円に専門家は「市場で売るのは無理」 筆頭株主が日銀という企業も
10年間続いた異次元の金融緩和をどう終わらせるのかもさることながら、もうひとつ、次期日銀総裁の植田和男氏(71)に課せられているのが巨額のETF(上場投資信託)をどう処分するかという宿題だ。
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日銀の担当記者が言う。
「2月下旬、国会は植田氏に対して所信聴取を行いましたが、この場で植田氏が“大問題”としたのが、日銀が買い続けてきたETFについてでした。もともと日銀によるETF買いは、2010年、白川方明総裁時代に始められましたが、黒田東彦(はるひこ)総裁時代に、一気に加速し、これまで約48兆円が株式市場に注ぎ込まれてきたのです」
目的は株価の下支えだ。多い時で1日700億円の日銀マネーが株式市場に流れ込んだことから、買い入れの時間帯を読んで先回りで儲けるといったテクニックも出現したほど。だが、好きなだけ紙幣を刷れる日銀が株を買い続けたことから、日本の株式市場は異様な姿に変貌する。
「株価が下がれば即買い出動するということを続けてきた結果、現在では東証プライムの時価総額の約7%分を日銀が持っていることになります。中にはアドバンテスト(間接保有割合約25%)、ファーストリテイリング(同約20%)、TDK(同約20%)など、事実上の筆頭株主が日銀という企業もある。中央銀行が株式市場の最大株主なんて、中国でもあり得ない」(同)
「市場で売るのはもう無理」
深刻なのは、日銀が無制限に買ってきたことで先行きが懸念されている国債でも満期が来れば償還される。が、株式は売るしかない。ある意味、異次元緩和を終わらせるよりも難しいのだ。
もし、株式市場が暴落するようなことがあれば、日銀の資産も大きく傷むことになり、円の信用が揺らぎかねない。
インフィニティのチーフエコノミスト・田代秀敏氏が言う。
「もはや“日銀がETFを売る”といううわさが流れただけで株価が急落するような状態になっています。実際に売るとしても、気の遠くなるような時間がかかる。毎年3千億円ずつETFを市場で手放すとして100年以上です。どのみち市場で売るのはもう無理でしょう。最終的には政府が出資するような受け皿会社を作ってETFを移管するしかないと思います」
国債とETFという二つの爆弾を抱え、4月9日、日銀の新体制がスタートする。