「120キロ台の遅球」で智弁和歌山を翻弄…「投手歴1年半」英明の右腕が見せた“常識外れの投球術”

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キャッチボールのような腕の振り

 連日、熱戦が続いている選抜高校野球。大会で最初に“サプライズ”と言える結果を残したのは英明(香川)だった。3月19日に行われた大会2日目の第3試合、甲子園春夏合わせて4度の優勝を誇る、智弁和歌山(和歌山)を相手に、3対2で見事に勝利した。【西尾典文/野球ライター】

 前評判では、強打を誇る智弁和歌山が圧倒的に有利と見られていた。試合前のシートノックが終わった際に記者席の近くを通りかかった、ある球団のスカウトは、両チームの選手を見比べて「(智弁和歌山の体が大きくて)体格の差があり過ぎる。同じ高校生には見えませんね」と話していたほどだ。

 英明に選抜初勝利を導いた“キーマン”は、先発マウンドに上がった右腕の下村健太郎(新3年)である。毎回出塁を許しながらも、6回を投げ切って、わずか1失点という粘りの投球で、強力打線を封じ込めた。

 下村の投球スタイルは、現代の高校野球では“稀有”だ。少しアンダースローに近いサイドスローのフォームには全く力感がなく、まるでキャッチボールのような腕の振りから投げ込む。

 このような投げ方だから、当然、ボールにスピードがない。ストレートの球速は、平均120キロ台前半で、最速は129キロにとどまっている。それにもかかわらず、智弁和歌山打線は、遅いストレートにことごとく差し込まれて、力のないフライやゴロを量産していた。

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