中国の「歴史的な仲介」で、中東情勢はむしろ悪化する可能性…警戒すべきイスラエルの逆襲

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イスラエルの逆襲

 中国が仲介に成功したことで「米国の中東地域における影響力の低下が鮮明になった」との見方が出ているが、ミスリードだと言わざるを得ない。

 4万人規模の部隊を展開し、中東地域の安全保障を維持する米国の役割を中国が肩代わりすることはできないからだ。

 サウジアラビアとイランの今回の「手打ち」は、大国の狭間で翻弄されがちな中東諸国の実利追求の動きの一環と捉えるべきだと思う。

 中国の思惑とは異なり、中東情勢が悪化してしまうリスクも頭をもたげている。

 最も警戒すべきは不意打ちを食らったイスラエルの逆襲だ。

 イラン核施設への軍事攻撃を主張していたイスラエルのネタニヤフ首相にとって今回の和解は痛恨の極みだった。「イラン包囲網の強化」と「サウジアラビアとの国交樹立」という自らの大戦略が一気に瓦解してしまった。

 ネタニヤフ氏は、自身が進める司法改革に対する国民の不満が爆発して窮地に追い込まれており、同氏が対外的な強硬手段に活路を見出す可能性は排除できなくなっている。

 今回の和解でメンツを潰された感が否めないバイデン政権内でも「サウジアラビアの実質的な支配者であるムハンマド皇太子を失脚させるべきだ」との物騒な声が出ているという(3月13日付ZeroHedge)。

 イスラエルや米国が実力行使に打って出るような事態になれば、中東地域全体が大混乱に陥るのは必至だ。原油輸入の中東依存度が98%と過去最高となっている日本は、未曾有の危機に直面してしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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