中国の「歴史的な仲介」で、中東情勢はむしろ悪化する可能性…警戒すべきイスラエルの逆襲
「中国は中東の平和を実現するため、責任ある大国としての役割を発揮していく」。
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中国外交担当トップの王毅・国務委員は3月10日、北京で行われていたサウジアラビアとイランとの協議の閉幕式の場でこのように述べた。
7年にわたり断交していた両大国が中国の仲介で外交関係の正常化に合意したことに世界は驚いた。中東地域における中国のプレゼンスの向上は、3月の全国人民大会(全人代)で3期目入りが確定した習近平政権にとって格好の追い風となった。
サウジアラビアとイランはイエメン内戦などで互いに敵対勢力を支援し、その対立は中東地域の不安定要因となってきた。特に、2019年にサウジアラビアの石油施設がイラン製のドローン攻撃で深刻なダメージを被ったことに世界の原油市場は震撼した。
両国は敵対する一方、双方ともに中国への接近を図ってきた。
サウジアラビアは昨年12月、同国を訪問した中国の習近平国家主席を厚遇して蜜月ぶりを演出した。中国は世界最大の原油輸入国であり、その最大の輸入元はサウジアラビアだ。サウジアラビアにとっても中国は最大の輸出先だ。
イランも2021年に中国との間で25年間の包括的な協力協定を締結した。厳しい制裁が課されているのにもかかわらず、昨年12月の中国のイラン産原油の輸入量は過去最大を記録した(3月12日付ロイター)。
このサウジアラビアとイランの関係正常化を、中東ではエジプトやトルコ、ペルシャ湾岸の親米諸国など多くの国が相次いで歓迎する意向を表明した。
中国は今年、北京で湾岸地域のアラブ諸国やイランとのハイレベル会合を開催することも予定しており、政治レベルでの関与をさらに強める構えだ(3月13日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。
米国との対立が激化する中、中国にとって最優先事項の1つはエネルギー資源の確保であり、輸入原油の4割を依存する中東地域で存在感を高めることが悲願だった。
人権問題で中東諸国とぎくしゃくしている米国やウクライナ戦争で中東地域にまで手が回らなくなっているロシアを尻目に、中国は「漁夫の利」を得ている。
米国は安全保障面から地域の秩序を保ってきたが、中国は経済力を通じて影響力を行使するアプローチをとっている。中国式の外交は中東地域でも成功したかにみえるが、その限界も明らかになりつつある。
「中国の債務の罠」への警戒
習近平国家主席が「一帯一路」の前身である「シルクロード経済ベルト」を打ち出してから今年で10年。2023年は節目の年となる。
一帯一路とはユーラシアからアフリカにかけての広大な領域に交通系インフラを建設して物流を活発化させる構想だ。その結果、中国主導の経済圏を創設することを目指す。この構想には約140カ国が参加しており、これまで中国はインフラ建設のために約1兆ドルを投じてきたとウォール・ストリート・ジャーナルは推計している。
だが、全人代の場で言及されることはほとんどなかった。中国政府は「一帯一路フォーラム」の3回目の会合を今年開催することを予定しているが、首脳レベルの参加が激減することが懸念されているからだ。
一帯一路に対する国際的な反発が影響している。
一帯一路の「最重要国」とみなされるパキスタンでは「中国の投資は地元の利益になっていない」との反発が高まっており、中国にとって死活問題であるグワダル港の開発も頓挫しつつある。スリランカやザンビアが相次いで債務不履行に陥ったことから、関係国の間で「中国の債務の罠」への警戒感が強まっている。
このように、中国の経済力をテコに影響力を行使するやり方は、時間が経過するとマイナス面がプラス面を上回ってしまうことがわかってきている。
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