物価高騰で「駄菓子屋」の苦境 昭和24年創業「ぎふ屋」店主は「1番人気のうまい棒は“大人価格”で」「メーカーはこれからが正念場」

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人気ナンバー1の商品は

――大人と子供との会話が成り立つのも駄菓子屋の特徴のひとつだ。

土屋:今の子は会話しながら買い物の勉強をする機会がないんです。誰も教えないのか、チューインガムは紙に包んで捨てるものということを知らず、そのまま吐き捨てる子供もいる。そういう子にはエチケットを教える一方で、「ここにいさせて」という鍵っ子もいれば、「傘貸して」という子もいます。それに応えてあげられるのも、駄菓子屋の文化だと思っています。

――一番人気の商品は「うまい棒」だそうだ。価格は子供10円(税込)、大人12円(税抜)とある。

土屋:仕入れ値は2割上がって1本10円になりました。だから10円で売ったら利益が出ないどころか、仕入れに使う車のガソリン代などを入れたら赤字です。でもね、子供相手に消費税入れて13円にするとは言えないんですよ。その代わり、大人のお客さんにはちゃんと払ってもらいます。大人のお客さんも賛成してくれています。

――懐かしい「すもも漬け」は70円。昭和の頃は30円くらいだったような……。

土屋:そうですね。しかも昔は3粒入っていたけど、今は2粒に減りました。ストローもつかなくなった。コストカットに苦労しているようです。

5円チョコが5円じゃない

――「きなこ棒」は50円、小さくなった「モロッコヨ―グル」は30円、粉ジュースの「アメリカンコーラ」が40円! 御飯のおかずにもなる「さくら大根」は90円! 昔に比べれば高くなった。そういえば、5円玉の形をした「5円チョコ」が見当たらない。

土屋:製造はしているんですよ。だけど1つ1つ個別ではなくなり、値段も上がった。とはいえ、それをバラして5円チョコを1つ15円で売るわけにはいかないでしょう。ですからうちでは置いていません。

――数年前に「梅ジャム」の製造中止が報じられた。

土屋:これは今もあるんですよ。あの時は都内で製造していた職人さんが辞めるというだけ。この世からなくなっちゃうような報じられ方だったけど、梅ジャムを作っているところは今もたくさんあります。なくなりかけても、他のメーカーが引き継いで作り続けているものも少なくない。なくなった商品といえば、製造中止になった「サイコロキャラメル」とか、菓子ではないけど、指に塗ってつけたり離したりすると煙のようなものが出る「おばけけむり」のメーカーは廃業しましたね。「するめ」はイカの不漁で、もはや駄菓子屋に置けるような格安品ではなくなりました。

――仕入れも大変になってきているという。

土屋:駄菓子屋はメーカーと直接取引するわけじゃありません。問屋から仕入れるわけですが、日本最大と言われた日暮里の駄菓子問屋も再開発でほとんどなくなってしまいましたし、1店で全て揃うという問屋さんもなくなりました。問屋さんも高齢化が進んでいます。うちは12~13軒と取引しないとこれだけの商品は揃わない。ガソリン代もかさむんですよ。

――それでも生き残っていける駄菓子屋があるのはなぜですか。

土屋:うちは今は店と住居は別だけど、自宅を店舗にしている店は家賃はかかりませんし、電気代も少ない。自宅商売は税金も安くなります。年金で生活できるお年寄りのお店は、商売と言うよりも街のコミュニティ的な残り方をしているのでしょう。

――「ぎふ屋」はあと何年続けられるだろうか。

土屋:後継者がいるわけでもありませんしね。単価はさらに上がっていくと思います。「うまい棒」が30円になったら買わないでしょ。あと4~5年はできるかな。その後は、10円ゲームのゲームセンターになっちゃうかもしれないね。

デイリー新潮編集部

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