藤井聡太が最年少六冠を達成 敗れた渡辺明二冠が自らを「羽生・藤井の間」と言っていた意味

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永世名人に近づけるか

 振り返れば、2020年7月、大阪で藤井にとって最初のタイトルとなる棋聖位を明け渡したのが渡辺だった。これによって渡辺は三冠から二冠になった。

 しかし、棋聖を藤井に奪われた直後、渡辺は豊島将之九段(32 =通算タイトル6期)に挑戦して悲願の名人位を奪い、三冠に戻した。その時、記者会見で渡辺は「僕ももう、年齢的にいつでもタイトルが取れるというわけではないから」などと話していた。

「若手天才棋士」と言われた渡辺も4月には39歳。40歳に手が届く年齢となった。

 名人位は通算5期で「永世名人」の称号が得られる。そのためにも現在3期の渡辺は藤井に負けるわけにはいかない。

 大阪市福島区にある関西将棋会館の最上の対局室には、木村義雄(1905〜1986=通算タイトル8期)、大山康晴、中原誠、谷川浩司の4人の永世名人の掛け軸がかかっている。現在、このほかに永世名人は、羽生と森内俊之九段(52 =同12期)が資格を持っている。

 渡辺は来たる名人戦については「あまり(棋王戦から)間を置かずに、という形になるので、今回の棋王戦を振り返りつつまた向かっていければいいかなと思います」と闘志を見せた。

 渡辺が藤井を退けて4連覇として永世名人に一歩近づくか。それとも藤井が渡辺を破って谷川の記録を破る「史上最年少名人」になるのか。さあ、いよいよ注目の名人戦だ。(一部、敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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