藤井聡太が最年少六冠を達成 敗れた渡辺明二冠が自らを「羽生・藤井の間」と言っていた意味
「羽生・藤井の間」とは
かつて「現役最強」と呼ばれた渡辺は、竜王と棋王で永世称号を持ち、全盛期には三冠を保持していたが、残るタイトルは名人だけになってしまった。
その渡辺は2年前に雑誌のインタビューで、将棋界での自らの位置づけについてこんなことを語っている。
「今の棋士は自分も含めて羽生・藤井の間という位置づけだったんじゃないか」(『kotoba』集英社・2021年春号より)
藤井とて、大山康晴(1923〜1992=通算タイトル80期)、中原誠(75 =同64期)、羽生善治(52 =同99期)といった大棋士に並ぶタイトル数を取ったわけではない(現時点で通算13期)。しかし、当時から渡辺は、藤井がそのクラスの棋士になることを確信していたのだろう。
タイトル数だけに限ってのことだが、渡辺に近いのは谷川浩司(60 =同27期)だ。渡辺はすでにこの記録を更新し、通算タイトルは31期で歴代4位である。渡辺流に言えば、谷川は「中原・羽生の間」という位置づけになるのかもしれない。
だが、タイトル数が上回る渡辺より谷川のほうが将棋界での存在感が大きいのは、やはり「永世名人」の称号を持つことが影響しているのであろう。
現在、将棋のタイトルは全部で八冠あり、優勝賞金の最高は「竜王」だ。このため、近年では日本将棋連盟も竜王を「将棋の最高峰」と呼称するようになり 、藤井のことも「藤井竜王」とするメディアが多い。
しかし、将棋界で最も歴史があり重みがあるのは、なんといっても「名人」である。
その名人位を現在、渡辺が保持しているが、順位戦A級リーグで、藤井がプレーオフの末に広瀬章人八段(35 =通算タイトル2期)を破って挑戦権を獲得ている。これにより、ついに4月5日から、藤井六冠が渡辺のその「最後の宝物」をも奪いに挑んでくることになったのだ。
[3/4ページ]