藤井聡太が最年少六冠を達成 敗れた渡辺明二冠が自らを「羽生・藤井の間」と言っていた意味

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「長い年月、出場させてもらった」

 一方、敗れた渡辺はこう振り返った。

「終盤はもうちょっと何かあった気がするんですけれど……。駒損の分だけずっと辛いのかなと。もう少し息長く指せた手があったのか。その辺りの判断が分からなかった。(中略)負けてしまった将棋があまりチャンスがなかったので、もう少しチャンスがある将棋にしないと、なかなか結果はついてこないという感じですね」

 さらに、棋王11連覇はならなかったが、10連覇した棋王戦を振り返って 、「長い年月、出場させてもらったので、いろいろ思い出はありますけども。また出場できるようにやっていきたいと思います」と寂しそうに話した。

 先手は渡辺。双方が「角交換」から「腰掛け銀」の戦法になり、午前中の指し手は迅速に進んだ。午後から藤井が優勢に立ったが、渡辺が盛り返してゆく。

 渡辺が85手目、藤井陣に「6三成銀」 と攻め込んで、藤井が角を逃げたあたりでは、ABEMAのAI(人工知能)評価値は五分五分だった。藤井陣は自らの銀が壁になってしまう「壁銀」で、1筋の方向に玉が逃げられない悪い形になっていたが、92手目にこれを解消させる。渡辺はすかさず95手目に「2三」に歩を打って、玉の逃げを牽制する。

 藤井としては、自陣の桂馬が跳ねると、「6四」に角を打たれて「王手飛車」がかかる。 このあたり、解説していた飯島栄治八段(43 )も「渡辺さんのほうの景色がよくなってきた感じですね」と見ていた。

 藤井が96手目に「8六歩」で反撃に出ると、最終版まで互角の激しい攻防となった。ところが、やや優勢だった渡辺が125手目に「7七桂」としたところで、一挙に形勢が藤井に傾いた。AI評価は渡辺の勝率が23%に落ちていた。 次に藤井が「7五桂」とすると、渡辺玉は「金縛り状態」になる。

 最後の最後まできわどい勝負を続けたが、渡辺は持ち駒の桂馬2枚がうまく攻撃に使えず、金銀が持ち駒になかったため、弱い守りが一挙に崩された。渡辺は藤井よりも15分ほど早く持ち時間が切れてしまい「1分指し」になっていたのも辛かった。

 解説の飯島八段は「藤井さんが渡辺さんのわずかの隙をついて、最善、最速の手順で詰ませてゆくのはさすがでした。でも、勝負はほんのわずかの差。本当に名勝負でした」と感服していた。

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