「道端ジェシカ」なぜ逮捕容疑が一般には知られていない「麻薬特例法違反」だったのか
「CCD捜査」
薬物捜査でこの捜査手法を用いる組織として真っ先に挙げられるのが、厚労省の麻薬取締部、いわゆる「マトリ」である。
元厚労省麻薬取締部部長の瀬戸晴海氏は、自著『マトリ』(新潮新書)のなかで、次のように綴っている。ここで瀬戸氏が触れているのは、道路の舗装に用いられる“ロードローラー”の巨大なローラー部分に、100キロを超える大量の覚醒剤が詰め込まれて密輸された事件である(※以下、瀬戸晴海著『マトリ』より抜粋)。
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我々は税関の協力を得て「CD(コントロールド・デリバリー)捜査」に踏み切った。いわゆる「泳がせ捜査」である。これは92年施行の麻薬特例法によって導入された捜査手法で、違法行為が発覚してもすぐには検挙せず、捜査員が監視を続けた上で犯罪の全体像を掴んでから検挙する。
この事件では、CD捜査のなかでも「CCD(クリーン・コントロールド・デリバリー)捜査」が用いられた。つまり、敢えて税関検査を通過させたロードローラーが、組織の人間の手に渡ったところで一網打尽にする。ただし、ロードローラー内の覚醒剤は代替物(この事件では“氷砂糖”)に入れ替えておく。これが「CCD捜査」である。
たとえ監視体制が万全と思われても捜査の現場に不測の事態はつきものだ。捜査のためとはいえ、大量の覚醒剤が一時的にでも街中に出てしまうことに危険性がないとも言えない。そこで、事前に内容物を入れ替えておくのだ。
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