今度は「半導体」で日本を騙す韓国 来日の尹錫悦が繰り出した必死の作戦
日本は韓国無しでやっていけるが……
――日本は半導体分野で韓国の助けは必要ないのですか。
鈴置:まったくありません。メモリーはキオクシア(旧・東芝メモリ)というNAND型フラッシュメモリーで世界2位のシェアを誇る会社があります。DRAMは米マイクロンの日本工場があります。
車載半導体など非先端ロジックはルネサスエレクトロニクスが奮闘しています。先端ロジックは台湾・TSMCの工場を熊本に誘致しました。2022年には日本政府も出資して最先端半導体を製造するラピダスが設立されました。米IBMから技術供与を受けます。
日本は韓国無しでもやっていけますが、製造装置や素材が弱い韓国は日本無しではやっていけません。しかし、尹錫悦大統領は本当のことは言えないので、日経に対し「韓日米台の協力は国際供給網の安定に寄与する」とか「相互補完的な協力分野を発掘していけば、シナジーを創出できる」といった観念論を展開したのでしょう。
TSMCは日本だけでなく、米国でも工場を作ることを決めました。米政府の誘致の結果です。昨年、中国の脅威を痛感した米国、台湾、日本は半導体ネットワークを一気に強化しました。というのに、米中の間でどちらに付くか決めかねている韓国。小田原評定を続けるうちに、米台日の半導体同盟から締め出されつつあるのです。
半導体の盛衰は地政学で決まる
韓国人は半導体産業の盛衰は国際政治、あるいは地政学的な要因で決まることをよく知っています。絶対に勝てないと考えていた日本の半導体産業が1990年代に一気に崩れ落ち、「韓国と台湾の時代」がやってきた。これを身をもって体験したからです。
それは韓台企業の地道な努力の賜物でもありましたが、日本の台頭を恐れた米国が全力を挙げてその半導体産業を潰した側面もありました。そして今、韓国メディアには「米国の次の標的は、中国との関係を断たない我が国だ」との恐怖の表明が溢れます。
だから尹錫悦政権は執拗に日本に「半導体協力」を訴えるのです。韓国にとって運のいいことに、お人よしで外相時代に2度も韓国に騙された岸田文雄氏が首相をやっているのです。
まずは尹錫悦大統領が語ったように、ホワイトリスト(現・グループA)への復帰を迫ると思います。3品目の輸出管理は緩和されましたが、グループAに戻らないと韓国は自由自在に半導体関連の素材や製造装置を輸入できるようにはならないからです。
新設の経済安保対話では「米国の強引な対中半導体封鎖網」への不満を日本に語らせようとするでしょう。日本をして対中封鎖網を弱体化させる作戦です。成功すれば韓国は「中国工場の閉鎖」という国の危機を回避できるかもしれません。中国に恩も売れます。
外交的な対中包囲網であるQuadに関し韓国は「反中色の薄い準メンバーとして加入する」という作戦を立てています。舌先三寸で米中二股を貫徹するつもりなのです。IPEFも同様です。半導体でも同じ手口を使うでしょう。
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