今度は「半導体」で日本を騙す韓国 来日の尹錫悦が繰り出した必死の作戦
韓国を疑う米国
――米国はそこまでやるでしょうか?
鈴置:やるでしょう。半導体封鎖網は軍事力を使わずして中国を抑え込む、ほぼ唯一の手段なのです。2019年に日本が韓国の横流しを理由に、半導体関連3品目の輸出管理を厳格化した時のことを思い出して下さい。
韓国は「日本がいじめる」と米国に泣きつきました。しかし、当時のD・トランプ(Donald Trump)大統領は「いったい私にどれだけ仲介しろと言うのか」と突き放しました(「輸出規制に文在寅は打つ手なし、日本を非難するほど半導体は『韓国離れ』の皮肉」参照)。
米国は中国への横流しを疑っていたと思われます。そもそも、「韓国の横流し」を日本に教えて輸出管理を厳格化させたのも米国だった――と見る情報関係者が多いのです。
米国は韓国に対する猜疑心を隠さなくなっています。米政府はサムスン電子など補助金を貰って米国工場を新設する企業に「今後、10年間は中国で製造拠点を拡張しない」というタガをはめました。
昨年8月に発効した「半導体法」(CHIPS and Science Act)が根拠です。最近、これに加え「米国工場で使う製造装置や素材を申告したうえ、製品の販売先を明らかにするよう」求めました。韓国企業による先端半導体の対中輸出を封じるだけでなく、製造装置や素材の中国への横流しも監視すると宣言したのも同然でした。
尹錫悦大統領は4月に米国を国賓訪問します。国賓と言えば聞こえはいいのですが、J・バイデン(Joe Biden)政権は尹錫悦大統領の頭をなでて、半導体分野でも中国との腐れ縁を断ち切らせるつもりでしょう。
中国との腐れ縁は続く
――韓国は中国との腐れ縁を断たないのですか。
鈴置:そのつもりはありません。日韓首脳会談後の会見でも尹錫悦大統領は本音をのぞかせました。以下です。
・韓国の「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」と、日本の「自由で開かれたインド太平洋」の推進過程ででも、国際社会と緊密に連帯し協力していくことでしょう。
まず、留意すべきは日韓の「インド太平洋戦略」は根本から異なることです。日本は「開かれた」という文言で、中国の不法な海洋進出と対決する姿勢を明確にしました。
一方、韓国は中国を刺激する「開かれた」を使わず、「平和、繁栄」を形容詞にしました。これは、「中国との対立を避け、共同繁栄する道を選ぶ」との意思表示です。
日本には岸田文雄首相をはじめとして「インド太平洋戦略を打ち出した韓国を評価する」と語る人が多い。もし本気で言っているとするなら、韓国にすっかり騙されていることになります。
尹錫悦発言で注目すべきは「インド太平洋戦略の推進過程で、国際社会と緊密に連帯する」と語った部分です。要は「日本の反中的な姿勢を改めさせます」と中国に向かってゴマをすったのです。
ドイツと対照的な韓国
尹錫悦大統領はIPEF(インド太平洋経済枠組み)発足の席でも「開放性・包容性」との言葉を使い、この組織の反中的な性格の払拭に努めました(「『東アジアのトルコ』になりたい韓国、『獅子身中の虫』作戦で中国におべっか」参照)。
「北朝鮮の脅威に対抗するため米国との関係は大事にする。しかし、反中ネットワークには加わらない」というのがこの政権の基本スタンスです。半導体でもそれは同じなのです。
首相と外相、財務、防衛など6閣僚が訪日し、3月18日に日本と政府間協議を初めて開いたドイツと比べれば、姿勢の差は明らかです。ドイツは日本が主張する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に賛同しました。中国を念頭に「国家主導の不正な技術獲得」や「不透明な開発金融」に関しても、日本と共に懸念を表明しました。
ドイツも経済的な中国依存度を深めていましたが、自由と民主主義を守るためには中国との対立を辞さない覚悟を固めたのです。一方、韓国人は左翼だろうが保守だろうが、中国に立ち向かう気概はない。長い間、中国の属国暮らしをした後遺症です。
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