今度は「半導体」で日本を騙す韓国 来日の尹錫悦が繰り出した必死の作戦

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 3月16日に開かれた日韓首脳会談で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「半導体協力」への固執が際立った。韓国は今、米国、台湾、日本の半導体同盟から仲間外れになりかかっている。日本を騙してそこに潜り込むのが狙い、と韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

韓日米台で供給網

鈴置:尹錫悦大統領は訪日前から、米国が主導する半導体同盟に強引に入り込む意欲を隠しませんでした。ロイターの書面インタビュー「『日本との協力不可欠』と韓国大統領、北朝鮮や供給網への対処で」(3月15日、日本語版)から発言を拾います。

・北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まり、世界の供給網が混乱するポリクライシス(複合危機)の時代に、韓日が協力する必要性が増している。緊張した韓日関係を放置したまま時間を無駄にすることはできない。

 尹錫悦政権は日本との早急な和解に動く理由に「核武装を進める北朝鮮の脅威に対抗する必要がある」ことを挙げてきましたが、訪日直前になって「供給網」にも言及したのです。

 日本経済新聞などによる書面インタビューでは「半導体の供給網」と具体的に言明しました。日経の「韓国大統領、 日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待」(3月16日)から引用します。

・半導体産業を主導する韓国、日本、米国、台湾などの実質的な協力は、国際供給網の安定に寄与する。「相互補完的な協力分野を発掘していけば、シナジー(相乗効果)を創出できる。

 “本番”の日韓首脳会談では尹錫悦大統領は経済安全保障に関する対話の場を新設するとの約束を取り付けました。「半導体協力」を念頭に置いてのことです。

 尹錫悦大統領は会談翌日の3月17日、経団連と韓国の全国経済人連合会が開いた「ビジネスラウンドテーブル」でスピーチ。ここでも「韓日の企業は半導体、バッテリー、電気自動車などの未来の先端新事業分野で連携できる余地が大きい」と強調しました。

日本から武器を取り上げる

――なぜ、これほど「半導体協力」にこだわるのでしょうか?

鈴置:韓国では、半導体の製造装置や素材の供給を断たれるかもしれないとの不安が増しています。「半導体協力」の美名を掲げ、日本から武器を取り上げておく必要があったのです。

 3月16日、日韓首脳会談後の会見で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は以下のように誇りました。

・本日、日本は3品目の輸出規制措置を解除し、韓国はWTO提訴を撤回しました。いわゆるホワイトリスト措置に対しても、早急な原状回復のために、緊密に対話することにしました。

「輸出規制」とは日本が2019年7月に半導体製造に使うフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの3品目の対韓輸出管理を厳格化したことを指します。

 韓国はこの措置の撤回を異様な熱心さで日本に求めていました。「徴用工」裁判の落とし所を探る交渉の際も、関係改善の証(あかし)として直ちに解除するよう要求してきました。今回、日本に飲ませたことは、尹錫悦大統領とすれば大手柄だったのです。

 保守系各紙も3月17日の社説で解除を外交的成果として歓迎しました。朝鮮日報の「韓国大統領の12年ぶりの訪日と日本の留保的な態度」(韓国語版)は「徴用工判決以前に戻った」と歓迎しました。

 中央日報の「未来へともに進む出発点となった韓日首脳会談」(日本語版)も「輸出規制を4年ぶりに解除したのは意味が小さくない。韓日関係の代表的な障害が消え、両国の交流地平が拡張される契機になったためだ」と、韓国の安堵の空気を伝えました。

 東亜日報の「韓日が困難の中で再び戻った出発点、今後行く道は遠い」(韓国語版)は「急変する世界情勢の中で半導体など先端産業協力も強固にせねばならない」と「半導体協力」の意義を強調しました。

中国工場が無用の長物に

――日本が半導体関連素材の対韓供給を断つ、なんてことがあるのでしょうか。

鈴置:韓国から見ると「十分にあり得る」のです。米国は今、対中半導体封鎖網を構築中です。日本とオランダは先端半導体の製造装置の対中輸出を止めると米国に約束しました。台湾はそもそも先端半導体の対中輸出を自主規制しています。

 詳しくは「どうする韓国、中国が怖くて半導体封鎖に加われないのか 『ホワイト国』に再指定すれば日本も同罪」をご覧ください。

 米国は韓国に対しても「韓国半導体2社の中国工場の設備更新を2023年10月以降は許さない」と通告しています。半導体産業は技術革新が激しいので、設備を更新しなければ韓国2社の中国工場はたちまち陳腐化します。中国は半導体不足に陥る可能性が大です。

 要は、製造装置市場で寡占体制にある日蘭、ロジック半導体で圧倒的な強みを持つ台湾、メモリーで世界の過半のシェアを握る韓国を糾合し、中国を半導体飢饉に追い込むのが米国の作戦です。

 ところが韓国は米国に抵抗、中国工場の設備更新を続ける構えを見せています。韓国2社の中国工場は準主力工場だからです。サムスン電子はNAND型フラッシュメモリーの40%を中国・西安工場で製造すると報じられています。

 SKハイニックスはNAND型の20%を中国・大連工場で、DRAMの40%を中国・無錫工場で作っている模様です。米国の言うことを聞けば、韓国の主力産業たる半導体は壊滅的な打撃を受けます。

 朝鮮日報は3月8日、社説「サムスン・SKハイニックス、68兆ウォンを投資した中国工場が無用の長物に」(韓国語版)で「米国の中国封じ込め政策が韓国半導体産業に致命傷を負わせる」と訴えました。

 68兆ウォンは日本円に換算すれば6兆9000億円。そこから上がる利益を考えると、個別企業に留まらず国の致命傷になり得ます。

 韓国の業界は「中国工場閉鎖の次は半導体の対中輸出規制を迫られるのではないか」と神経を尖らせています。韓国の輸出の20%前後が半導体で、その半分は中国向けなのです。

 日本ではあまり知られていませんが、韓国は米国と極度の緊張状態にあります。もし、韓国が米国に逆らって中国工場の設備更新を続ければ、米国は日蘭に命じて半導体製造装置の対韓輸出を止める可能性があります。また、レジストなど日米企業が寡占状態にある素材の対韓輸出も止まるでしょう。

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