【WBC】「大谷は人種差別も超えた」日米での活躍知る“ゴーンヌおじさん”が語るその凄み、そして変化

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WBCで見えた「変化」

 大谷はメジャーリーグの経験を経て、ひと回りもふた回りも大きくなった。そしてWBCでは、ヌートーバーなど周りの選手に声をかけ、チームの雰囲気作りにも貢献している。日本ハム時代から大谷を知る近藤さんにとっては、この変化も驚きだったという。

「大谷選手を何回も取材しているけれど、味方のチームメイトも気軽には話しかけられない選手なんです。だって、打者の練習が終わってロッカールームに戻ったと思ったら、すぐに荷物を取り替えて、投手の練習に行くわけだから。周りもそれを知っているから、邪魔をしちゃいけないだろうなという雰囲気になる。これまで、どちらかというとプレーで引っ張るイメージだった大谷選手が、WBCではリーダーシップも芽生えてきている。ベンチでも積極的に自分から声を出してやっているところを見ると、自分が中心であるという立場がわかってきたんだなと感じます」

8年間の実況でもっとも記憶に残るのは…

 近藤さんには、日本ハム時代の大谷の試合で今も鮮明に記憶に残っている場面がある。2016年、福岡ソフトバンクホークスとのクライマックスシリーズファイナルステージ第5戦だ。この試合、3番DHで先発した大谷だったが、3点リードの9回にはDHを解除して5番手としてマウンドに上がった。

「大谷がDHを解除してマウンドに上がった瞬間、それまでざわざわしていた札幌ドームの観客が息をのみ、シーンとしたんです。最初の打者を三振で仕留め、次の打者には日本選手最速となる165キロを記録した。ストレートがミットに入った瞬間、スポーンッと、ビール瓶のふたを開けたような音が聞こえた気がしました。あの試合、あの瞬間は8年間での実況の中でも特に記憶に残っています」

 この試合、3者凡退に抑えた大谷は、この年日本ハムを10年ぶりの日本一へと導いた。その際の指揮官が現在、侍ジャパンを率いる栗山英樹監督だ。今度は世界一に向け、日本中が息をのんで見守る瞬間を大谷は作ってくれるはずだ。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。現在は退社し雑誌、ウェブで記事を執筆。個人ブログ「OUTCAST」も運営中。Twitter:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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