選抜高校野球、優勝候補を次々に撃破!ミラクルVを達成した“伝説のチーム”

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創部3年目で快挙の“魔法旋風”

 最後に紹介するのは、創部からわずか3年目で史上最短の全国制覇を成し遂げた2004年の済美である。

 大阪桐蔭と東北の2強を中心に、明徳義塾、愛工大名電など歴戦の強豪が顔を揃えた同年、宇和島東で一時代を築いた名将・上甲正典監督が手塩にかけて育てた1期生が最終学年を迎えた済美も、“ダークホース的存在”に挙げられていた。

「過ぎた欲を持たず、とにかくひとつでも勝てれば」(上甲監督)と1戦必勝を目指したチームは、土浦湖北を9対0、東邦を1対0で連破し、8強進出をはたす。

 だが、準々決勝の東北戦は、エース・ダルビッシュ有が登板回避したにもかかわらず、8回を終わって2対6の劣勢。9回に1点を返したものの、2死無走者となり、快進撃もここまでかと思われた。

 ところが、ここから“神がかり”とも言うべき奇跡が起きる。連打で一、二塁と粘ったあと、3番・高橋勇丞が起死回生の逆転サヨナラ3ラン。レフト・ダルビッシュが呆然と打球を見送る姿が対照的だった。

「こんな形で勝てるなんて……。目に見えない何かが宿っていたと思う」と指揮官が評したミラクルチームは、準決勝で明徳義塾を7対6、決勝で愛工大名電を6対5といずれも僅差の試合に競り勝ち、初出場初Vの快挙を達成した。

「やればできるは魔法の合言葉」の校歌の歌詞にちなんで“魔法旋風”ともてはやされたことを懐かしく思い出すファンも多いはずだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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