「飛ぶゴルフ」に終止符か ボールの飛距離制限案でゴルフ観戦がつまらなくなる
300ヤード超えが当たり前
ここ40年ほど世界のゴルフ用具メーカーは、近代技術を駆使して「飛ぶボール」の開発合戦にいそしんできた。選手たちは飛距離を伸ばすためにトレーニングを積み、筋力増強に努め、スイングの改造にも取り組んできた。その結果、PGAツアー選手を筆頭とする「エリート・レベル」のプロたちの飛距離は年々伸びている。
1990年代の飛ばし屋、トム・パーツァー の平均飛距離は279ヤードだったが、1995年頃のパワーヒッター、ジョン・デーリー は平均289ヤードを飛ばしていた。
現代のロングヒッター、ロリー・マキロイ の平均飛距離は327ヤードを記録しており、PGAツアーでは300ヤード超えが「当たり前」の時代を迎えつつある。
飛距離が伸びたことで「ゴルフがダイナミックになった」と言われる一方、「ゴルフが飛距離偏重になった」とも言われている。
選手たちがこぞって飛距離を伸ばせば、大会の舞台となるゴルフコースも伸長せざるを得なくなる。マスターズの舞台であるオーガスタ・ナショナルは、これまで何度も改造工事を行ない、いくつかのホールを伸長してきた。経済力があるオーガスタ・ナショナルは隣接するゴルフ場を買収することで対応できるが、世界中のゴルフ場がコースを伸長できるかと言えば、資金力にも土地にも限界はあるはずだから、大半は「ノー」と答えることになる。
そうした限界を見据えたUSGAとR&Aは、2018年からディスタンス(飛距離)面からゴルフ用具を見直すプロジェクトを立ち上げ、ほぼ毎年、ディスタンス・レポートを発行。さまざまな分析結果を伝え、提案もしてきた。
2022年のディスタンス・レポートによれば、世界中のゴルファーの飛距離は、毎年平均4%ずつ伸びているとのこと。その伸びがゴルフ場の限界点を突き破ってしまう前に、なんとかして歯止めをかけなければということで、今回、ボールの飛距離に制限を設ける新たな規定が提案された。
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