「バフムト攻防戦」はウクライナ軍の抵抗でワグネルが苦戦 専門家は「ロシア軍総崩れの可能性も」

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ワグネルの暗躍

 ウクライナ軍がレオパルト2を運用できるようになるためにも、バフムトを死守し、貴重な時間を稼ぐ必要があるというわけだ。

 そのバフムトだが、欧米メディアはロシア側に夥しい死傷者が出ていると報じている。ロイター(電子版)は3月14日、「バフムト周辺でロシア兵1100人超殺害か、『取り返しのつかない損失』とウ大統領」との記事を配信した。

「バフムトの激戦が欧米メディアにクローズアップされるのは、戦争の帰趨を決定しかねない重要な戦いだからです。また、もう一つの要素として、民間軍事会社ワグネルが攻撃の主体を担っていることも挙げられます。ワグネルに多大な損害が出ているとなると、ロシア政界にも影響を及ぼしかねません」(同・軍事ジャーナリスト)

 ワグネルの創始者であるエフゲニー・プリゴジン氏(61)は、ウラジーミル・プーチン大統領(70)に近い人物とされている。そのプリコジン氏だが、ロイターの記事では自ら激戦の様子を語っている。

《敵は1メートル単位で戦っている。街の中心部に近づけば近づくほど、戦闘は激しくなり、大砲が砲撃し、戦車が出現する。ウクライナ軍は無限の予備役を投入してくる。しかし我々はこれからも前進していくだろう》

「ワグネルはバフムトに最精鋭の部隊を投入しました。難攻不落の要塞都市を陥落させてロシア軍の鼻を明かし、プーチン大統領からさらに強い信頼を勝ち取ろうとしたと見られています。春が近づいたためバフムトの大地は泥濘と化しており、戦車などは移動できません。そのため激しい砲弾戦が行われています」(同・軍事ジャーナリスト)

疲弊するロシア軍

 ワグネルはバフムトに火力を集中させ、力で押し切る作戦を採っているようだ。対するウクライナ軍は、都市の要塞化で守り抜き、ワグネルを必死に押し返していると見られる。

「ワグネルは一貫して自分たちの戦果だけを宣伝してきました。半ばバカにされた格好となったロシア軍は、特に幹部が苦々しい思いでワグネルを見つめていました。そこに起きたのがバフムトの激戦です。CNNは14日、ロシア軍が意図的にワグネルを支援せず、ウクライナ軍に撃破されることで弱体化を図っていると報じました(註2)。情報の真偽は分かりませんが、ワグネルもロシア軍も共に疲弊しているのは事実でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 やはりバフムトにおける激戦は、スターリングラード攻防戦と共通点が見出せるようだ。

「バフムトのウクライナ軍は、持ちこたえているだけでロシアに勝利していると言えます。ワグネルやロシア軍を全滅させる必要はありません。自分たちの戦力保持を最優先にしながら、敵に出血を強いることが求められています。ロシア軍は緒戦で将軍クラスを相次いで失い、今では連隊長クラスの死傷者が増加しています。指揮官が払底した軍隊は弱体化が避けられません。バフムトの陥落に失敗したワグネルとロシア軍は、スターリングラードで敗れたドイツ軍のように、後は総崩れという可能性も否定できないのです」(同・軍事ジャーナリスト)

註1:ウクライナ、東部の要衝バフムト防衛継続へ 「戦略的に最重要」(ロイター電子版:2023年3月15日)

註2:ロシア国防省、ワグネルの影響力を削ぐためバフムートを利用か ISW(CNN日本語電子版:2023年3月14日

デイリー新潮編集部

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