千葉「キングフィールズ」の継承物語 今や世界に名が知れ渡るGCに

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 コロナ禍がもたらした皮肉な好景気のひとつにゴルフ場の来場者数が増えて、ゴルフ場を身売りする経営者がいなくなったことがある。関東・関西地区のゴルフ場は平日も満杯だ。18ホール当たりの来場者数日本一は鎌倉CCだそうだ。昼間予約が取れないので早朝と薄暮にも客を入れているので芝は悲鳴をあげ、フェアウェイは穴だらけだ。

 ハゲタカによるゴルフ場買い上げも収まったというより、民事再生という悪法をつくらせて会員の預託金を95%カットさせ、たったの5%で買い取り、売り主には推定平均5億円の値をつけ、外国企業等に高値で売り逃げ、莫大な利益を得てアメリカに帰った。

 ハゲタカが得た利益は数千億円とも推測されている。500万円で入会した預託金はたったの25万円。「嫌なら25万円払うから退会しろ」ということになる。相手が悪いと会員は泣き寝入りだった。買い取った面積は東京・山手線内に匹敵する。

 ところがその逆もある。千葉県市原にある接待コースのキングフィールズゴルフクラブはいい継承者に恵まれ、会員権は身売りした頃の相場よりも高い600万円である(2月下旬)。倒産同様の名門コースを引き継いだのは横浜の磯子カンツリーの経営者 鈴木康浩さん(82)である。磯子CCはコースもさることながら中華料理の食事が美味で、横浜中華街の料理人たちがこっそりと食味するほどである。鈴木さんにキングフィールズの話が持ち込まれたのはキングフィールズの弁護士から磯子CCの弁護士を通じてのこと。故人となられた江島一雄社長は福島県郡山市のスーパーのオーナーで、東京・日本橋でレストランを経営していた。バブル期のことで、日本一の接待コースの夢に向け、昭和60年(1985年)11月にオープンさせる。当時、東京からの足の便が悪く、来場者不振からついにギブアップ状態に。心労で故人になられた。

 事情を聞かされた鈴木さんはこっそりとプレー視察に訪れた。そのときの第一印象がキャディの言葉遣い、距離の正確さ、マナーの良さなどキャディ教育が行き届いていることだった。他の日にも出かけたところ同じ印象である。「キャディさんのマナーの良さで決めました。あとは弁護士さんに任せました」と当時を語る。

 キャディ教育の良さのナンバーワンは磯子CCと千葉夷隅CCだがキングフィールズも同格だった。経営を引き継ぐことにした鈴木さんは18番グリーン横の池の水をペットボトルに詰め、郡山の墓地に眠る江島一雄さんの墓参りをしている。池の水で墓石を洗い、花立ての水も入れ替えて献花し「本当にご苦労さまでした。あなたのコースも社員も私が引き継ぎますのでご安心ください」と報告したそうである。日本文化を知らないハゲタカどもに教えてやりたい「侍の心」である。

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