国立健康危機管理機構は岸田首相の肝いりだが…次のパンデミックに備え日本がやるべきことは

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 3月13日からマスクの着用に関するルールが「個人の判断」となった。新型コロナウイルスの感染症法上の分類も5月8日に5類に引き下げられることが決まっており、日本でもポストコロナの流れが加速している。

 思い起こせば、3年にわたってさまざまなコロナ対策が講じられてきた。本コラムでは岸田政権の対策を中心にその有効性について改めて論じてみたい。

 政府は3月7日、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、「国立健康危機管理機構」を新設する法案を閣議決定した。新たな機構は米疾病対策センター(CDC)をモデルとしており、その使命は「感染症の大流行という有事の際に調査・分析から臨床対応までを一体で行う」ことだ。

 岸田総理の肝いりの構想だが、筆者は当初から疑問を呈してきた。

 米国では最前線で格闘していた医師や行政責任者から「CDCは何もしない。パンデミックの緊急時対応に失敗した」と批判されていたからだ。

 CDCは多くの優秀な人材(1万4000人超)を擁しているが、緊急時対応には不向きな組織だったことが災いした形だ。

 このため、筆者は「頭でっかちな組織を作るよりも最前線で活躍できる感染症専門医を増やした方が有事対応に適している」と主張してきた。

日本医師会への疑問

 感染症専門医はパンデミックの際に地域全体の感染対策を主導できるスペシャリストだが、日本感染症学会が認定する感染症専門医は約1600人に過ぎない 。「その2倍の要員が必要だ」と言われながらも、事態改善に向けた取り組みはまったくなされていない。

 国全体の医療体制も脆弱なままだ。パンデミック発生当初から「病床数は世界一多いが、医療人材が分散配置されているため、医療崩壊がすぐに起きてしまう」と揶揄されてきた。

 政府は医療体制の充実を図るために、「コロナ病床確保料」や診療報酬に「コロナ特例」を認めるなどの金銭的なインセンティブを設けてきた。だが、運用の際のチェックが甘く、補助金を受け取りながら患者を受け入れない「幽霊病床」が増えるばかりだった。

 連日のようにメディアに登場していた日本医師会にも疑問の声が上がっている(2022年3月7日付日本経済新聞)。

 同会は医師の代表というイメージが強いが、診療所や病院の経営者の会員率は高いものの、勤務医では3分の1にとどまっており、「パンデミックの最前線で苦闘する医師たちの意見が反映されていない」との声が根強い。

 日本医師会に医療現場を動かす権限が与えられていないことも大きな問題だ。コロナ下で需要が高まった往診や遠隔医療などを普及させる務めを果たせたとは言いがたい。

 このような状況にもかかわらず、政府は5月8日以降、季節性インフルエンザのように身近な医療機関で対応してもらえる態勢への移行を目指している。コロナ対応の受け皿を現在の4.2万カ所から6.4万カ所に拡充するとしているが、発熱外来を掲げながら診療実績が乏しい「名ばかり」施設が少なからず存在しており、通常医療への移行は政府の期待どおり進まない可能性が高い。

 有事に弱い医療体制は一向に改善されていないことから、次のパンデミックの際にも同様の問題が繰り返されるのではないだろうか。

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