戦後の混乱期にバレエに情熱を注いだ人々が 話題のドキュメンタリー映画の舞台裏

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“心で踊る”姿を撮りたい

 舞台に立つ宮尾をはじめとする現役ダンサーたちは、それぞれが葛藤やプレッシャーを抱えていたという。

「70年という長い時間を経ていますから、同じ役柄でも当然のようにダンサーの意識や解釈、演じ方にはギャップがある。それでも現役のダンサーに当時のように“心で踊る”姿を撮りたいと働きかけました」

 演技のあり方を巡っては、王子役の宮尾が思わず本音を吐露する場面も登場する。

「心情を高めて動きを大きくするという試みに抵抗があったようです。宮尾さんは“いくら初演時の表現方法であっても、いまの時代には滑稽に映る恐れがある”と感じており、ほかのダンサーたちもそれぞれの思いがあったとか。とはいえ、最後には、全員が熱量の高いパフォーマンスを発揮してくれましたね」

 名作「白鳥の湖」を巡る過去と現在の邂逅。本作は時代を超えてバレエを愛する人々の証言録でもある。

週刊新潮 2023年3月16日号掲載

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