72年ぶり“除名”処分でも「第二、第三のガーシー議員」は防げない 政治家の信頼失墜が招くさらなる悪夢

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国会議員には一律に歳費をはらうべきなのか

 また、ガーシー議員の除名を巡る一連の動きの中で浮き彫りとなったのは、登院しない議員に対する対応の問題だ。今の制度は、当選しても登院しない議員が現れることを想定して作られていない。初当選からこれまで自動的に支払われた歳費は1800万円あまり。ガーシー議員は立花前党首に預ける意向を示しているが、それは問題の解決にはならない。理由なく登院しない場合は歳費の支払いを停止するなどの何らかの措置を決めない限り、再発を防止できない。

 さらに言えば、出席欠席だけにとどまらず、国会議員の査定についても考えるべきではないか。国会議員は選挙で当選さえすれば、辞職するまで何をやってもやっていなくても給料が支払われる。日本国憲法第49条に「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と規定されている。歳費に加えて、事実上の給料と言える文書通信交通滞在費も加えれば一人の議員が受け取る税金は、年間3000万円以上になる。これは当選回数とは関係ない。

 実際、2022年6月にパパ活疑惑で自民党を離党した吉川赳衆院議員は、現在も無所属議員として歳費を貰い続けている。吉川議員の活動について、かつての同僚である自民党議員に聞いても、「本会議では見かけるけど、普段何をしているかさっぱり分からない」と口を揃える。また2021年2月に選挙違反事件で有罪判決が確定した河井案里元参院議員には、当選無効となったにも関わらず歳費など約5000万円が支払われた。

 また、次の選挙には出馬しないからと地元活動もせず意欲も失って、ほぼ議場にいるだけの存在となっている議員もいる。このような議員を放置して政治家が信頼を勝ち得るわけがない。国会に出席しない議員は当然だが、登院はしていてもいわば「ゾンビ化」した議員の歳費に差をつけるシステムの導入、もしくはせめて議員の査定を国民に明らかにする仕組みが求められるだろう。

「じぶんごと」としての政治を取り戻す

 国民の代表としての政治家への信頼がなければ、代議制民主主義は成り立たない。政治への信頼が失われて投票率が下がれば、政治はますます一部の人々のものとなり、国民が「じぶんごと」として考えられない悪循環に陥る。今回のガーシー議員除名を切っ掛けにして、政治家が国民の代表として機能するように、制度の変更を含めて考え直さないといけない。物価高、少子高齢化、中国の台頭、エネルギー問題などなど日本は今未曽有の国難に直面している。信用できない政治家たちに舵取りを委ねている猶予は、この国にはないはずだ。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 星槎大学非常勤講師 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。21年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。音声プラットフォーム「voicy」で永田町取材やメディア出演の裏話などを発信している。

デイリー新潮編集部

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