俳優・三浦友和という生き方 2年前のインタビューで語った「浮気についての名言」

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三浦を変えた相米慎二監督との出会い

「世間から注目され続けたプレッシャーはありましたか?」と問うと「何も感じませんでしたよ」と答えた。

 至って自然体で言った。ただし、自著『相性』によると、この境地に達したのは結婚5年後の1985年以降。故・相米慎二監督との出会いがあったから。

 それまでの三浦は「『百恵ちゃんの旦那』というプレッシャーもありました。『山口百恵の~』と冠が付くことへの苛立ちもありました」(『相性』)という。

 だが、相米監督の映画「台風クラブ」で俗物の数学教師・梅宮役を演じるうち、そんな気持ちは消え失せた。

 相米監督は演技指導をしない。俳優自身に演技を考えさせる。監督が納得するまでOKを出さず、延々と撮影が続く。

 三浦に対しては「振り向き方がさ、三浦友和なんだよな」とだけ言った。その言葉が何を意味するのか三浦は考え、気づいた。

「それまでの私は、『三浦友和』という偶像に、無意識のうちに縛られていました」(『相性』)

 どこかで世間が考える三浦友和であろうとしていた。この映画で三浦はヨコハマ映画祭などの助演男優賞を受賞した。新人賞を除くと、初めての映画賞だった。以降、演技が目に見えて変わっていった。映画賞も立て続けに獲る。

 ここ約10年の映画界での活躍は特にめざましい。主演映画「葛城事件」(2016年)では、次男が無差別殺人犯になる父親に扮した。家族にも世間に攻撃的で、ふてぶてしい男だった。

 ベルリン国際映画祭国際審査員特別賞を得た「風の電話」(2020年)では震災で家族を失い、親戚も病で倒れてしまい、途方に暮れて泣いている女子高生に声を掛け、メシを食わせて励ますオヤジに扮した。泣かせた。

 今年度の映画賞を独占する勢いの逸作「ケイコ 目を澄ませて」(2022年)では岸井ゆきの(31)が演じる聴覚障がいのある主人公を見守るボクシングジムの会長を演じた。貫禄と存在感があった。

 存在感は昨年の秋ドラマ「クロサギ」(TBS)をご覧になった方なら、詐欺師の親玉・桂木敏夫役で確認済みのはず。好人物のように見えて凄みがあった。ほかの詐欺師が畏怖するのも納得だった。

 役柄の幅が広い。自信も感じさせる。百恵さんら家族を守り抜いた一方、プレッシャーを乗り越えてきたからでもあるのではないか。

 俳優に定年はないから、三浦はこうも言っていた。

「仕事は体が動くうちは続けたいと思いますよ。好きな仕事だし、限界が来るまで出来る仕事ですから」(『週刊新潮』2020年7月30日号)

 2月1日に行われた「キネマ旬報ベスト・テン」助演男優賞の受賞式では「賞をもらっても勘違いしないように、精進してまいりたい」と語った。既に3度目の受賞であり、「勘違いしないように」は冗談だろう。

 20代では青春スターとして主演が多かったが、今は大半が助演。だが、演じる役柄の大きさで仕事を考えることはない。

「(この仕事を)50年やっているので、主役、助演の感覚がなく、映画に参加させていただいているのが大きい。(私が参加することで作品の)完成度が高まる自分でいられたら」(「キネマ旬報ベスト・テン」受賞式)

 三浦が日本を代表する俳優の1人であるのは間違いない。とりわけ映画界には欠かせない存在だ。百恵さんの目に狂いはなかった。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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