「食道がんリスクが50倍」はどんな人? 何年禁煙すれば非喫煙者と同じになる? がん予防研究の最前線
歯磨きをする際のポイント
その他、すぐに改善可能でがんリスクを下げるために重要な生活習慣として、歯磨きが挙げられる。
「歯磨きには虫歯や歯周病を防ぐ効果があるだけではなく、がん予防にも大いに役立ちます」
と、中川氏。
「愛知県がんセンター研究所の調査によると、1日に2回以上歯を磨く人は、1回の人と比べて、口の中や食道のがんにかかるリスクが3割も低くなることが分かりました。逆に、全く磨かない人のリスクは、1回磨く人の1.8倍、2回の人の2.5倍にもなっていました」
歯磨きをする際のポイントは、
「デンタルフロスや歯間ブラシを使用することです。表面の歯磨きよりもこちらのほうが重要です。歯周病を防ぐという意味では、歯垢がたまる歯の間をきれいにするのが大切。歯周病の原因となる歯垢は細菌のかたまりで、その中には発がん物質のアセトアルデヒドを作るものがある。それが血液の中に入ると、すい臓がんのリスクなどが上がってしまいます」(同)
ゾウががんにならない理由
食生活や習慣は改善可能だが、前述したように、改善不可能な要因によっても、我々はがんになる。
例えば、遺伝。
「遺伝が原因となるがんは約5%です。もし血縁者が若くしてがんに罹患したら、その可能性を考えなくてはいけません」(中川氏)
血液型もまた改善不可能な要素だが、その違いによってがんリスクに差が出る、との研究があるという。
「09年に米国立がん研究所が発表した研究は『O型の人はA、B、AB型の人に比べ、すい臓がんになりにくい』と結論付けています」(同)
高身長の人ほどがんリスクが上がる、という事実もあまり知られていない。
「背が高くなるほど大腸がんのリスクが上がることが分かっています。背が高いほど細胞の数は多く、大腸も大きい。それだけがんリスクは上がるのです」(同)
ただし、体が大きいほどがんになりやすいという傾向は哺乳類全般に当てはまるわけではないようで、
「ゾウはがんになりにくいのです。ゾウは、p53というがんを抑える遺伝子が非常に多い。人間には1組しかないのに、ゾウには20組もあることが分かっています」(同)
無論、このような知識は「がん予防」にすぐに使えるわけではない。しかし、すでに触れたように、たばこの発がん物質は「p53」という「がん抑制遺伝子」などを不活性化する。ゾウには20組あるその「p53」は、人間には1組しかない。そのことは知っておいても損はないだろう。
[7/7ページ]