「食道がんリスクが50倍」はどんな人? 何年禁煙すれば非喫煙者と同じになる? がん予防研究の最前線
超加工食品のがんリスク
伝統的な和食に地中海食の要素を組み合わせると「最強のがん予防食」に近づきそうだが、それとは正反対なのが、「超加工食品」を多く摂取する食生活といえるだろう。超加工食品とはスーパーやコンビニに陳列されている袋詰めのパンや菓子、デザート、清涼飲料水(ソーダや砂糖入りのジュース)、即席めんや冷凍食品などを指す言葉である。
「超加工食品のがんリスクについては、フランスでの10万人以上を対象とした大規模な研究があります。この研究では、全食品群に対する超加工食品の摂取量の割合が10%増加すると、全てのがんを発症するリスクが12%増加していました」(同)
コンビニやスーパー、自販機などで売られているブラック以外の缶コーヒーにも、ジュースなどと同様に多量の砂糖が含まれていることがあるから避けた方がいい。しかし、コーヒー自体はむしろ積極的に飲むべきだという。
「およそ9万人の日本人を対象に、コーヒー摂取と肝臓がんの発生率との関係を調べた大規模な研究があります。それによると、コーヒーをほぼ毎日飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて肝臓がんのリスクが約半分に減少。1日5杯以上飲む人は、4分の1にまで低下していました」(同)
天然の抗がん剤
がんを遠ざけるためには、食生活を改善するとともに、日々の習慣を見直すことも重要なのは言うまでもない。特に運動にはがんを予防する効果がある。
「運動すると、慢性炎症が抑えられ、免疫細胞が活性化されます。また、筋肉からマイオカインという物質が分泌される。これにはがんを抑える“天然の抗がん剤”のような効果があります」
佐藤氏はそう語る。
「そして、運動すると、がんを誘発する高血糖の抑制にも役立ちます。このような理由で運動はがんの予防に良いのです」
ただ、仕事や家事が忙しくてウオーキングやランニング、筋トレなどの時間がなかなか取れない、という方も多いに違いない。そんな人にとって朗報といえそうなのが、以下の研究である。
「ウェアラブルデバイスを用いた画期的な研究で、22年11月に『ネイチャー』の姉妹誌『ネイチャー・メディシン』に報告されたものです。イギリスとオーストラリアの研究で、ふだん体を動かさない2万5千人以上(平均年齢62歳)が対象となりました」(同)
研究では、対象となった人たちの7日間の動きを細かく記録。その後、7年間におけるがんなどの死亡率を調べると、
「『ヴィルパ』と呼ばれる、1~2分の一時的な激しい動き、例えば乗り遅れそうなバスを追いかける、といったことですが、そういう動きが1日で3回あった人は、全くなかった人に比べて30~40%もがんのリスクが下がっていたのです。そうした動きが1回だけでもリスクは下がっていました」(同)
日常生活の中で、少し息切れするような動きをするだけでいいのだ。きちんと運動する時間が取れない人も、これなら明日からでも実践可能である。
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