「食道がんリスクが50倍」はどんな人? 何年禁煙すれば非喫煙者と同じになる? がん予防研究の最前線
食事の多様性
魚の他にも、みそや納豆などの大豆食品はがんの死亡リスクを下げることが分かっている。
「がんは大きくなる時、自分で血管を引き寄せて、新しい血管を作ります。これを血管新生と言います。こうして栄養を奪って大きくなっていくわけですが、大豆に含まれるイソフラボンには、この血管新生を阻害する、つまり抑える作用があるのです。がんの“芽”ができたとしても、成長させない効果があるわけです」(同)
みそ、納豆、魚。なるほど、我々が慣れ親しんだ和食には、がんと対峙するのに有効な多くの素材が使われているのだ。
「大事なのは、食事の“多様性”です。大豆製品や魚介類、野菜、果物、海藻、キノコ、緑茶など、いろいろな素材を少しずつ取る。それががん予防の面でも効果的です」
と、中川氏は言う。
「例えば、米やヒジキには発がんリスクのある無機ヒ素が含まれています。そこから分かる通り、全ての食べ物には一定程度の毒があると思ったほうがいい。発がん性のあるものを全て避けるのは現実的ではありません。伝統的な和食は発がんリスクの低減に大いに役立っていると思います」
最強のがん予防食
ギリシャや南イタリアなど地中海沿岸で取られている食事形態「地中海食」も和食同様、野菜や魚介など多様な食材によって構成されている。その地中海食の中心的な食材であるオリーブオイルには、
「強力な抗酸化作用や抗炎症作用があり、がん予防にも有効であると考えられています」
と、佐藤氏が話す。
「最近では、エキストラ・バージン・オリーブオイルから抽出された『オレオカンタール』という成分が、がん細胞を死滅させる作用(抗がん作用)を持つことが明らかになっています。また、イギリスから最近報告された研究では、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸を最も多く摂取する人は、最も少ない人に比べ、すい臓がんのリスクが71%も低くなっていました」(同)
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