「食道がんリスクが50倍」はどんな人? 何年禁煙すれば非喫煙者と同じになる? がん予防研究の最前線
遺伝子の変異
そのことは最近の研究でも明らかになっている。
「現在、さまざまながんにおけるゲノム情報が明らかになりつつありますが、日本、米国、英国など17カ国が参加する国際がんゲノムコンソーシアムでは、1万6千人の患者から採取したがん細胞の遺伝子情報をデータベース化し、研究者に公開しています」(同)
そのコンソーシアムの共同研究グループが2016年11月、喫煙と関連が深い17種類のがんを対象に、5243人のがん細胞の遺伝子情報を解析し、発表。
「喫煙者に発症したがんでは、非喫煙者のがんと比べて、明らかに突然変異の数が多いことが分かりました。毎日1箱を1年間吸った場合、細胞に蓄積する遺伝子変異の数は、肺が150個で最も多く、喉頭で97個、口腔で23個などでした。1日の喫煙本数が多いほど、喫煙年数が長いほど、これらのがんのリスクが高まると考えられます」(同)
佐藤氏もこう語る。
「たばこと胃や食道といった消化器官のがんには強い関係があります。厚労省が公開しているページでは、肺がんや咽頭がんだけではなく、食道がん、肝臓がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんまでが喫煙者がなりやすいがんとして列挙されています」
21年以上禁煙を続けると…
ただし、禁煙することによって徐々にではあるが、生涯非喫煙者と同等のレベルまでリスクを下げられるといい、
「21年以上禁煙を続けると、一度も吸ったことのない人と同じレベルまで下げられるという日本の研究結果もあります。がんの種類別で言うと、すい臓がんは0~5年、食道がんや膀胱がんは6~10年、肺がんが11~15年、胃がんは21年以上でリスクを同じレベルにできます」
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