大川隆法氏の死去を「地方のミニシアター」が憂うるワケ 「幸福の科学」映画と業界の知られざる関係性
宗教団体「幸福の科学」の総裁・大川隆法氏が亡くなって、はや1週間以上が過ぎた(享年66)。後継者を含めた教団の行く末を憂うるのは、公称1100万人の信者だけではないようだ。地方の小規模な映画館も、教団の動向に注目しているという。
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幸福の科学と言えば、大川氏による「霊言」とともに、教団制作の映画が知られている。その歴史は1994年の「ノストラダムス戦慄の啓示」に始まり、昨年10月に公開された「呪い返し師―塩子誕生」まで、25作品が劇場公開された。その多くで製作総指揮を務めるのは大川氏だった。
世のシネフィルでもそうそう観ることはないであろう“幸福映画”の内容について、映画評論家の椋圭介氏は次のように語る。
「2003年のアニメ映画『黄金の法 エル・カンターレの歴史観 』を観ました。イエス・キリストや文殊といった古今東西のエラい人が出てきて、結局、エル・カンターレこと大川隆法氏がいちばんエラいとわかる。幸福の科学の世界観がよくわかる明解な映画でした」
一般の観客にはなかなか敷居が高い作品のようだが、
「大手が運営するシネコンだけではなく、地方の小さな映画館でも幸福映画は定期的に公開されています。大川氏が亡くなり、今後も映画が作られるのかどうか、みんな気にしているんですよ」(劇場関係者)
とは、どういう事情なのだろうか。
支部長が動員を管理
席数およそ50の映画館を経営するオーナーが、ミニシアターをとりまく現状を次のように語る。
「そもそもミニシアターはシネコンに比べ大きく儲かるわけではありません。配給会社にしても、お客さんを呼べる人気作品は座席数の多い大きな劇場でやりたいですから、うちのような小さいところでの上映機会はなかなか回ってきません。映画好きだからなんとか続けているというミニシアターも多く、補助金などを受けやすくするためNPO法人化しているところだってあります。本当に観てほしい作品はあるけれど、それだけを上映して経営を続けていくのは難しい。だから幸福映画の存在はありがたいのです」
北海道から沖縄まで、幸福の科学は全国津々浦々に460の拠点をもつ。映画が公開されると、信者たちが劇場に来てくれるというわけだ。
「前売り券を買い占めてくれるのがまずありがたい。作品によっては、ヒットを演出しようと関係者が券をばらまくものの、実際には席が埋まらないこともあります。しかし、幸福映画にはそれがない。信者さんたちがちゃんと観に来てくれるのです。なぜなら、終映時間になると教団の支部長さんが劇場にやって来て、信者が観に来ているかチェックするからです。集客から“着券”まで全部を支部長さんがやってくれます」
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