日本の「おまかせ」が韓国で流行 “贅沢の象徴”を若者がSNSにアップ…そこから浮き彫りになること

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 韓国の若者の間では「おまかせ」レストランが人気だ。高級店のコースで提供される、メニューを店側に委ねる日本のシステムそのままの意味である。「おまかせ」に代わる韓国語がないため、日本語の発音そのままで呼んでいる。

 インスタグラムのハッシュタグにハングルで「おまかせ」と入力すれば、和風レストランの内装とともに寿司、鉄板焼きなど、和食の写真が続々と表示される。韓国の「おまかせ」は、高級和食レストランや、回転寿司ではない寿司のコース料理を意味していることが多い。韓国のレストラン予約アプリの中で最も多くのユーザー(ダウンロード100万回以上)を獲得している「キャッチテーブル」では、「おまかせ」メニューをクリックすると400以上の高級和風レストランが紹介される。レストラン選択のトップに「おまかせ」を設定していることからも人気のほどが分かるだろう。さらに「すしそら」「おさい寿司」など「おまかせ」専門チェーン店まででき、今後「おまかせ」が業界にさらに広がる兆しも見せている。

 2月中旬の平日、ソウル市孔徳(コンドク)にある有名な「おまかせ」チェーン「すしそら」へ行ってみた。ランチを待つ人たちに訊いてみると、2割がビジネス関係、残り8割が20~30代のカップルだった。以前、別の「おまかせ」レストランに行ったときは、若いカップルが圧倒的に多かった。

「おまかせ」は、いまや韓国の若者の「贅沢」の象徴だ。初めてのデートや誕生日、クリスマスなどの記念日には、人気の「おまかせ」レストランを予約する。すると「相手をがっかりさせない素晴らしい選択」とお相手や周囲からの評価は一気にあがる。恋人と一緒にでかけ、SNSに写真と映像をアップロードして他人に「おまかせ」自慢するまでがセットだ。

 しかし高い。ソウル市内の人気「おまかせ」店はランチが13万ウォン(約1万3,400円)、ディナー25万ウォン(約2万5,800円)。それでも「おまかせ」レストランは評価も高く、レビューが1,000件以上のところがほとんど。週末の予約は1週前から締め切られ、5日前にはウェイティング(順番待ちリスト)申請をしなければならない。

 もっとも韓国人が突然、豊かになったわけではもちろんない。とくに男性にとっては、資金とプライドの両方を失う原因にもなっている。

「おまかせ」破産の危機

 先日、後輩の男性が深刻な表情で相談してきた。今月のクレジットカードの返済代金が足りなくて知人にお金を借りているが、来月のカード代金も高くなりそうで、ストレスがたまっているという。

 原因は「おまかせ」だった。最近付き合い始めた彼女がデートの度に「おまかせ」するのにこだわり、今月にすでに4店の「おまかせ」レストランに行ったとのこと。寿司コース料理だけでなく、高い日本酒も注文し、「おまかせ」だけで出費は100万ウォン、10万円以上になっていた。

 韓国ではデートの食事代は必ず男性が払わなければならないという固定観念がある。それは日本より強い。男性が払う割合は99%という調査もあった。「割り勘」にしようものなら、女性から「私とつきあいたくないのね」「ダメな男」というレッテルが貼られ、これ以上、つきあってもらえなくなる。気になる女性の前では、収入が多く、センスのある男のふりをするために仕方がないというのが本音だ。

 こうした風潮だから、女性たちは「高くておいしい料理を食べたい」と思うのは当然で、「おまかせ」に連れて行ってもらえれば、SNSにさまざまな寿司の写真を載せ「私は常連」と誇示することができる。「おまかせ」ブームの背景には、こうした韓国の男女の見栄があるといえる。

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