PGAツアーが「予選落ちナシ」の改革案 モナハン会長に激怒するプレーヤーが続出するワケ

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 PGAツアーのフラッグシップ大会であるプレーヤーズ選手権の開幕前の会見(3月7日=現地時間)で、ジェイ・モナハン会長は今季から実施している「格上げ大会」をさらに変更する大改革を発表した。2024年から実施されるその改革について、トッププレーヤーたちは「素晴らしい」と絶賛しているが、大会出場に手が届かない大勢の下位選手からは「身勝手すぎる」と批判の嵐。さらに、すでにリブゴルフへ移籍しているフィル・ミケルソンが「『格上げ大会』は、かつてモナハン会長に提案した僕のアイディアだ」と主張するなど、米ゴルフ界は騒然としている。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

リブゴルフに対抗することが目的

 賞金総額2000万ドル級の「格上げ大会」は、今季からPGAツアーが実施している大改革の目玉だ。現状ではメジャー4大会などを含め全部で16大会が指定されている。

 そもそもこの「格上げ大会」は、破格の賞金でスター選手を引き寄せたリブゴルフに対抗する目的で、タイガー・ウッズやロリー・マキロイが中心となって提唱、今年1月のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズがその第1戦となった。

 その後もWMフェニックス・オープン、ジェネシス招待、アーノルド・パーマー招待、そして今週はプレーヤーズ選手権が「格上げ大会」として開催されている。

 だが、PGAツアーはこれらの「格上げ大会」をさらに改革することを決議し、先週のA・パーマー招待開幕前の理事会で承認された。そして今週、プレーヤーズ選手権開幕前の会見で正式発表となった。

 さらなる改革では、現状の「格上げ大会」のうちメジャー4大会とプレーヤーズ選手権、プレーオフ・シリーズの3大会を除いた8大会の全部または幾つかが、来年からは予選落ちのない4日間大会に変更され、1大会の出場人数は70~78名に絞られることになった。

 その70名ほどの出場枠は、プレーオフ・シリーズ第2戦のBMW選手権に進出を果たした50名が主体。残りの約20名は、「格上げ大会」以外のレギュラー大会での全優勝者、世界ランキングやフェデックスカップの上位者、さらに、スポンサー推薦を受けた選手によって埋められることになる。

トップ選手は改革を歓迎

 昨年6月にリブゴルフが創設された際、モナハン会長は「予選通過を目指して戦うことこそがPGAツアーの競争性の高さであり、伝統でもある」と言って、リブゴルフを激しく批判した。

 タイガー・ウッズも「予選カットなしで高額賞金が保証されている大会ばかりでプレーしていたら、練習や向上へのモチベーションが失われる」と言って、やはりリブゴルフを批判。選手会を率いるロリー・マキロイも「その通りだ」と大きく頷いていた。

 しかし、今回発表された改革は、そうした言葉とは180度対極を行く「予選落ちなし」是認の内容だ。

 なぜモナハン会長やマキロイの考え方がひっくり返ったのか、それは今のところ明かされてはいない。だが、彼らは手のひらを返すように考え方を変えた上で、「なぜ予選落ちなしの大会が素晴らしいか」を強調している。

 モナハン会長は「PGAツアーには予選カットなしの大会が昔からあり、歴代のビッグネームはみな予選カットのない大会で勝利を重ねてきた。アーノルド・パーマーは17勝、ジャック・ニクラスは20勝、タイガー・ウッズは26勝」と歴史的事実を挙げてみせた。

 そしてマキロイも「ゴルフヒストリーをよく見てみてほしい。ビッグネームはみなノーカットの大会で好成績を残してきた」と語り、モナハン会長とまったく同じ例を示した。

 モナハン会長もマキロイも、予選落ちがない大会のほうがビッグネームによる熱戦が展開されると言わんばかりの口調だが、それは結果論であって、予選落ちがないからビッグネームが熱戦を繰り広げたわけではないはずだ。

 しかし彼らは、そういう論法で「格上げ大会」をノーカット化する意義を説いてみせた。

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