大谷翔平「衝撃弾」でも燻る“不安材料” 侍ジャパン浮沈のカギは「ファンの期待」と「4番」

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熱気で自分の打撃を見失う危険性

 大谷はMLBの公式戦中、屋内の練習場でフリー打撃を行うことをルーティンとする。「外で打つともっと飛ばしたいと、余分な動きが出てくる」ことを理由の一つに挙げている。打席近辺での動きだけにフォーカスすることを重視しており、MLBでは同様の調整法を採用する一流打者が少なくない。裏を返せば、闇雲に強振しないことが状態を維持する上では極めて重要ということだ。

 試合前にもファンを楽しませた大谷のフリー打撃。大会中も継続するのか。

「大谷自身が認めていたように、阪神戦では直球を打ち損じた点が気になった。2本目のホームランも直球に詰まっていた。春先で、まだまだ調整段階であることには違いない。日本ラウンドで大会がスタートし、さらにファンの大谷への期待度、注目度は上がるはず。メジャーのホームラン競争でも教訓を得ているだけに、周囲の熱気で自分の打撃を見失うことはないと信じたい。準決勝以降の米国ラウンドでは熱気が落ち着いて普段のメジャーの雰囲気に近くなるとも思うが、余計な力みで打撃を狂わせないことを願っている」

ポイントは「4番」の確立

 阪神戦での2本塁打の内容が衝撃的だっただけに、他チームはさらに大谷への警戒を強めたもようだ。既に韓国代表の高祐錫投手が死球も辞さない発言で物議を醸したなか、元WBC日本代表コーチは、「阪神の投手は間違っても大谷にはぶつけられないとの意識が強かった。大谷も内角の厳しいところにはこないとの前提で、安心してフルスイングできていたと思う。しかし、本番ではそうはいかない。特に韓国は日本戦での熱の入れようがすさまじく、大谷もそう簡単に本来の打撃をさせてもらえないはず」と踏んでいる。

 さらに、死球以上に可能性が高いのが四球攻めとみられている。MLBではその傾向が顕著だが、一塁が空いているなどの場面では大谷がまともに勝負をしてもらえないケースが増えそうだ。

「21年のメジャーの後半戦では、前半戦で打ちまくった大谷との勝負を避けるバッテリーが続出した。中でもプレーオフ出場が懸かっているチームは大谷に打たれると致命傷になりかねなかっただけに、まともに攻めてこないことが多かった」(MLB担当記者)

 同年の大谷の敬遠四球はア・リーグ最多の20個にも上った。これもホームラン王を逃した一因とされた。

「勝敗が最優先の国際大会で、大谷が普通に調子を保っていれば無理して勝負に挑んでくるチームは、特に準々決勝以降になれば少なくなる。ある程度点差があり、歩かせてもいい場面で、敬遠を判断するチームは少なくないとみている」(前出の元代表コーチ)

 となれば、大谷の次を打つ打者が日本の得点力の鍵を握るということになる。

「エンゼルスでも大谷の次の打者が迫力不足だったため、大谷は勝負を避けられた。今回の日本代表は当初の構想では3番の大谷に続く4番は村上(宗隆内野手=ヤクルト)だったが、大会直前まで不振でオリックスとの最後の強化試合では吉田(正尚外野手=レッドソックス)に4番を譲った。大会中も4番は様子を見ながら決めることになるかもしれない。大谷と勝負をせざるを得ないような打者を、大谷の後に確立できるかどうかが攻撃面では日本が勝ち進む大きなポイントになる」(前出の元監督)

 大谷が絶対的な存在であるがゆえに、これらのケースにハマると悩みは深くなりそうだ。

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