柔道・大野将平 パリ五輪不出場も「引退ではない」 指導者目指し「今後はもう少し優しい顔も見せたい」

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ガッツポーズをしない

 大野の高い評価は勝つことだけではない。その「サムライ」のような武道人の姿で、勝った後もガッツポーズもせず、深々とお辞儀をして淡々と畳を降りるのが印象的だ。

「ガッツポーズをするのは『人間として底が浅い』『当たり前の仕事を当たり前にやるだけ』と思っていたけど(オール一本勝ちした)2013年の世界選手権では出してしまった。これも人間だろうけど、(その後は)そういう無駄も削り落としてきた」(大野)

 さらに、「前人未到、史上最強、人間離れ、怪物的な強さを求めてやってきた。山口県から出てきた柔道少年が、ここまで来るとは誰も思っていなかった。まあ合格点でしょう」と自身を評価した。

「才能があったわけでも特別優れてもいなかったが、柔道の王道を歩みたい純粋な心で、講道学舎、天理大学という名門で柔道を学んで、五輪2連覇できた。東京五輪には私が一番縁のある選手だと思っていて、自分がラストサムライと思って戦っていた。実現できたことが私の柔道人生の一番の誇りだし、日本の柔道を世界に体現できたという自負も持っている」(大野)

「人生において、東京五輪での2連覇以上の成功体験、感動体験というのは、私の今後の人生で超えてくるものは間違いなくないと思う。競技生活以上に、セカンドキャリアで心燃えるものはないだろう。自分から柔道や金メダルを取り除いた時、あらためて魅力ある人間であれるように、この経験を活かしたい」と決意を見せた。

ヨーロッパでの柔道人気

 オリンピックの柔道で2連覇以上した日本人選手は、男子は60キロ級3連覇の野村忠宏を含め斉藤仁、内柴正人、大野将平の4人、女子は谷(旧姓・田村)亮子、谷本歩実、上野雅恵の3人。

 大野は「2連覇とか3連覇とかの数字で判断してほしくはない。柔道家としての生き方を見てほしい」と語る。

「日本では柔道の金メダリストが大勢いて、どうしてもその中の1人に埋もれてしまう感覚もあった。しかし、試合や合宿でヨーロッパに行くと熱烈な歓迎をされ、現地では柔道の人気や熱量がある。自分の人気があるうちに現地に飛び込み国際的な人材になりたい。ヨーロッパでは日本のように恵まれた環境ではなく、命を懸けて戦っているし、日本人以上に武道の精神を持つ選手もいる」(大野)

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