ヤクルト「奥川恭伸」が順調な一方で、不安視される選手も…復活を期す選手の“気になる現在地”
ストレートは故障前の状態に
3月に入り、オープン戦が本格化してきた今年のプロ野球。ルーキーなどの新戦力の話題が多いが、それ以上にペナントレースに大きな影響を与えるのは、実績がありながらも故障で昨シーズンを棒に振った選手ではないだろうか。昨年日本一に輝いたオリックスでは、怪我で過去2年間一軍登板のなかった近藤大亮が復活を遂げ、中継ぎとして32試合に登板している。そんな今年復活を期す選手たちの“現在地”を探ってみたい。【西尾典文/野球ライター】
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投手で最も注目を集める存在と言えるのが、ヤクルトの奥川恭伸だ。一昨年はチームトップタイとなる9勝をマークするなど先発の柱に成長したものの、昨年は肘の故障でわずか1試合の登板に終わった。
同期入団で同じ投手の宮城大弥(オリックス)と佐々木朗希(ロッテ)がWBCの侍ジャパンに選ばれていることを考えると、大きな挫折のシーズンとなったことは間違いない。
一時はトミー・ジョン手術の可能性が報じられたが、結局は手術を回避する“保存療法”を選択した。キャンプで慎重な調整を続けて、ストレートは、既に故障前の状態まで戻ってきているという。
一昨年のシーズン終盤からポストシーズンにかけての投球は、エースの風格すら漂っていただけに、このまま順調に回復してくれば、セ・リーグ三連覇を目指すヤクルトにとって、これ以上ないプラスとなる戦力となりそうだ。
侍ジャパンの「予備登録メンバー」
そして、同じ投手で奥川以上に順調な仕上がりを見せているのが、種市篤暉(ロッテ)だ。プロ入り2年目の2019年には早くも8勝をマークして、頭角を現したものの、翌年に右肘を故障。その年の9月にはトミー・ジョン手術を受けて長期離脱となった。昨年4月にようやく実戦復帰を果たしたが、一軍登板は1試合に終わっている。佐々木を筆頭に若手投手の台頭があって、かなり種市の影が薄くなった印象は否めなかった。
ところが、今年はキャンプから順調に先発としてのメニューを消化。周囲が驚くほどの回復ぶりを見せているという。
「昨年は二軍でもかなりばらつきがありましたが、今年は別人のように仕上がっているように見えます。まずストレートの力が完全に戻りましたね。フェニックスリーグであえて短いイニングを全力で投げて、肘への不安を解消できたのが良い方向に出ているように見えます。ストレートが戻ったことで、持ち味のフォークも生きるようになりました。佐々木と種市が万全な状態で1年ローテーションを守ったら、彼らだけでかなりの貯金を作るかもしれません」(他球団の編成担当者)
2月26日に行われた西武とのプレシーズンマッチで、種市は4回を投げて9奪三振と圧巻のピッチングを見せた。昨年一軍で1試合しか投げていないにも関わらず、WBCに臨む侍ジャパンの「予備登録メンバー」に選ばれたことも、それだけ状態が良いことを表していると言えそうだ。
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