「駆け込み贈与」が不可能に? 大増税時代に資産を移行するためのメソッドとは
“見返りは期待しない”
「生前贈与にあたって肝に銘じておくべきは、“お金に色はつけられない”ということです」
とは、行政書士の露木幸彦氏である。
「例えば関係が良好な子どもに対し、将来的に面倒を見てもらおうと考え“介護費”のような意味合いを込めてお金を渡したとしても、実際に面倒を見てくれるケースは意外と少ないものです。子どもからすれば、受贈したお金はいわば“あぶく銭”。汗水流して手にしたものではないので、あっさり使い込んでしまうことも珍しくありません」
贈与があだとなり、かえって関係に亀裂が入るおそれもあるというのだ。親子とはいえ、まとまった金を手にした途端に態度を一変させてしまうのもまた、人間の性(さが)には違いない。
「“この子は優しいから老後は世話になろう”と生前贈与したら急に冷たくなって放っておかれることもありますし、それほど関係が良くなかった子が面倒を見てくれることもある。甘言を弄した長女と次女に財産を渡したものの、あっさり裏切られてしまい、最後に寄り添ってくれたのはけんかして追放したはずの三女だった──。そんな『リア王』のようなケースも、多く見受けられます。“贈与したお金はあげたもの。見返りは期待しない”。生前贈与に際しては、そのように割り切ることが肝要だと思います」(同)
いかに税制が改められようとも、その心構えはおいそれと揺り動かしてはならないというのだ。
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