「駆け込み贈与」が不可能に? 大増税時代に資産を移行するためのメソッドとは
ちぐはぐな印象
実際に、昨年11月には政府税制調査会の専門家会合が、二つの特例について、おもに富裕層を利する制度であることから「廃止する方向で検討することが適当」との意見を公表。税制改正大綱の方向性に大いに影響するとみられていたのだが、一転、存続が決まった格好となっている。
「岸田政権は“異次元の少子化対策”を掲げ、現役世代の中でも子育てにあたっている世代への重点的な支援を謳っています。そんな最中に特例をなくせば、政策としてちぐはぐな印象を与えかねません。二つの特例の延長は、政権の看板政策への配慮ともいえるでしょう。ただし『3年』『2年』と差をつけていることから、あるいは『結婚・子育て』は2年後にそのまま廃止となる可能性もあります」(同)
矛盾する“二つの目標”
深代理事長が続けて、
「今回の税制改正大綱をひもとくと、高齢化に伴って相続のタイミングがどんどん遅くなり、若年・中高年への財産移転が進まなくなっている現状を踏まえながら、高齢者の財産をより早く移転させて経済の活性化を図りたいといった狙いが透けて見えます」
ところがその一方で、
「相続税と贈与税の一体化を念頭に、(先述した)令和3年度の大綱を引き継ぐ形で、資産移転の時期の選択により中立的な税制を作りたいと謳ってもいます。高齢者の財産を早く移転させるためには、相続よりも贈与の方が“お得”だと思わせなければならないはず。それが『移転の時期に中立な税制』を推し進めていけば、結局相続しても贈与しても納税額は変わらないという結論になってしまう。つまり、大綱の中で矛盾するような“二つの目標”が、同時に掲げられているというわけです」
これでは納税者からの不満が募るのもむべなるかなである。それでも、新制度には不承不承従わざるを得ないのが辛いところ。我々は、あとに残される家族に資産を託す時、いかに振る舞うべきなのか。
[4/5ページ]