日の丸半導体の復活なるか 新しい資本主義を構築する鍵は「経済安保」
日本の経済界の評判は…
半導体に脚光が当たっているが、経済安全保障の点から重要な物資は幅広い。
政府は2022年10月、経済安全保障推進法に基づき安定供給を目指す「特定重要物資」を指定した。
経済産業省の所管では半導体の他、蓄電池や永久磁石、航空機用素材、天然ガス(LNG)など8分野に及んだ。
国土交通省の所管では海上輸送を支える船舶関連の機器が選定された。
厚生労働省所管の抗菌薬や農林水産省の肥料原料も選ばれたが、「特定重要物資」の範囲は今後拡大されることが想定されている。
ロシアのウクライナ侵攻から1年が経過し、紛争の長期化が懸念される中、米国はロシアや中国から友好国に生産や原材料の調達を移す「フレンド・ショアリング」の動きを一層強めている。その典型例が日本など14カ国を巻き込んで中国を牽制する目的で構築を進めているインド太平洋枠組み(IPEF)という経済連携だ。
国際的な関心が高まるばかりの経済安全保障だが、日本の経済界の評判は芳しくないままだ。「経済情勢以外の面倒なことを考えずに経営に徹すればよい」という従来のやり方に慣れた経営者が頭を切り換えることは大変だろうが、経済安全保障は日本経済、特に地域経済にとってプラスの効果をもたらし始めていると言っても過言ではない。
冷戦終了後のグローバル化により、日本の産業基盤の海外移転が大幅に進んだが、経済安全保障の要請から巻き戻しが始まっている。
日本企業はこれまで安全保障に対してリスク回避を優先しがちだったが、「経済の効率と安保のコストのバランスを取る」戦略を構築せざるを得なくなっている。激変する国際情勢の下で新たなチャンスを追い求めるしたたかさを忘れてはならないのだ。
半導体ほどのインパクトはないかもしれないが、他の特定重要物資の生産の国内回帰が進めば、地域経済にとって「福音」となる可能性は高い。その際、重要なのは投資の受け皿となる地方自治体の努力と政府のバックアップだ。
新しい資本主義を掲げる岸田政権は、経済安保をテコにした「シン・富国強兵策」を策定すべきではないだろうか。
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