最側近の離反でプーチンの終末が近づいた 地下壕を転々とし、あだ名は“塹壕じいさん”
軍部に怒りのマグマ
しかも古本氏によれば、
「侵攻軍指揮の主導権を奪回したゲラシモフら軍側も、プーチンと意見が対立しているといわれています。損耗が激しい軍は、現在占領しているドネツク、ルハンスク両州からなるドンバス地方とクリミア半島を死守し、和平交渉に持ち込みたい。しかし、プーチンは、総攻撃を仕掛けて占領地域をより拡大したいという野心を持っていて、軍部には怒りのマグマがたまっているのです。そしてこうしたプーチンへの不満を、彼の権力基盤であるシロヴィキも抱えているといわれる。これが二つ目の火種です」
シロヴィキとは、ロシアの支配階級である軍、治安、情報機関系の勢力を指す言葉だ。
「現在、この筆頭といわれるのが、安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記です。KGB出身の彼はプーチンの最側近で盟友。しかし、最近、プーチンと彼の間に対立が生まれたとの情報が出ているのです」(同)
名越教授が言葉を継ぐ。
「パトルシェフは従来、戦争終結後、プーチンの後継者に農相を務める自らの息子を据えることをもくろんでいたが、プーチンが応える気配が見えない。それに激怒し、安全保障会議のオンライン会議を欠席しているとの話があります」
なるほど、磐石に見えるプーチン政権の内部もこの1年で揺れているのだ。
精神状態が乱高下
そして当のご本人も、
「身体的にも、精神的にもガタが来ているのは明白です」
と述べるのは、筑波大学の中村逸郎・名誉教授(ロシア政治)である。
「かねて報じられているように、がんやパーキンソン病を患っている可能性が高い。また、精神状態も乱高下しています。最近では、1月に開かれた閣僚会議でのシーンが話題を呼んでいます。ロシアのテレビで流されたその映像を見ると、戦地への兵器輸送がうまくいっていないことについて、“何をやっているんだ、バカ野郎!”“ふざけるな! ひと月以内に終わらせろ!”などと副首相に怒鳴り散らしているのです。これを受けて記者から質問された報道官は、“日常的な光景だ”と言ったとか」
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